相続税対策のポイントとは?不動産運用や生前贈与が効果的!

2018/06/15

税金対策

汗を流して築き上げた資産はやがて子や孫に引き継ぐことになりますが、この「相続」という行為は、国によって課税対象と定められています。しかし子供や孫に資産を残すなら、できるだけ無駄なく多くを残してあげたいものです。
相続税を少なく抑えるために、どんな対策があるのでしょうか。将来に備え、早くから子供に贈与すべきでしょうか?不動産に投資しておくべきでしょうか?あるいは、様々な控除を組み合わせるのが良いのでしょうか?
この記事では、相続税を抑えるためにどのような工夫があるのか、ポイントを解説します。

相続税対策の基礎知識

●相続税とは?

相続税は思いのほか大きなものであり、また資産(相続財産)が大きければ大きいほど、その税率も高まります。

具体的には、相続税は次のような基準によって課税されます。

・相続税の基礎控除額 = 3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)
・税率 = 10%~55%

例えば9,200万円の相続財産に対して相続人が2人の場合、基礎控除額は4,200万円(3,000万円+600万円×2人)ですので、5,000万円(9,200万円-4,200万円)について相続税が課税されます。

その際の税率は、相続人ごとに別個に適用されます。Aさんが6割、Bさんが4割の相続をするならば、課税対象額の5,000万円を6割と4割に按分します。つまりAさんはこのうち3,000万円を相続するため税率15%、Bさんも2,000万円を相続するため税率15%が適用されます。税率の決定に際して、追加の支払い控除額が指定されています。たとえば相続額3,000万円以下では算出後の税額から50万円減額すると定められています。したがって、Aさんの納税額は400万円、Bさんの納税額は250万円となります。

 

●相続税対策の必要性

このように、たんに相続を受けるだけで大きな税を課されることになります。特に平成27年1月1日に税制が改正され、相続税の基礎控除額が減額となったため、相続税の負担はますます大きくなりました(上記の例は新税制にもとづく計算)。相続税支払いを分割する延納という制度もありますが、それでも納付のために遺産の一部を手放さざるを得ないケースもあります。

それゆえ事前の節税対策は欠かせません。将来の相続に向けた入念な事前準備をすることで、相続税はかなりの程度まで抑えることができます。

相続税対策にはいくつかの方法があります。特に節税効果が大きいものは、不動産運用を行うことと、生前贈与を行うことです。他にも会社設立、生命保険、養子縁組といった方法が知られていますが、今回は特に大きな節税効果を期待できる不動産運用と生前贈与に絞って解説します。

 

相続税対策として不動産を運用するメリット・デメリット

相続税対策として不動産を運用する際のメリットとデメリットについて解説します。

 

●メリット

そもそも、不動産投資がなぜ節税につながるのでしょうか。

それは、現金や預金の形で持っている資産を不動産に変える(投資)することで、課税対象としての資産の「評価額」が大きく下がるからです。言い換えれば、不動産に変わった資産は実際よりも小さな資産とみなされ、相続税が小さくなります。

不動産には土地部分と建物部分があり、この両方について相続税が課税されます。戸数の多いタワーマンションでは、マンションの建つ土地を全ての入居者で分割して所有するという考え方をするため、土地部分の資産価値が小さく抑えられ、とりわけ節税に有利です。

 

不動産運用には、相続税対策の他にもメリットがあります。

まず、家賃という形で定期的な収入を得られます。とりわけ相続以前の老後を見据えたとき、家賃収入は大きな安心材料となります。

次に、相続税だけでなく所得税や住民税も節税することができます。これはなぜでしょうか。所得税や住民税の課税額の根拠となるのは、給与所得や事業所得だけでなく、不動産所得も合算した上での所得金額です。もし不動産投資において、減価償却費・修繕費・管理費などの経費が家賃収入を上回れば、不動産所得は赤字となります。するとこの赤字分が、給与所得や事業所得の黒字と合算されて所得金額を押し下げてくれますので、結果として課税額を抑えることにつながります。

 

 

●デメリット

一方で、不動産投資にはデメリットも存在します。

上記のように不動産所得が赤字になれば節税効果が増す半面で、逆に黒字になれば、その所得額に応じて所得税・住民税の課税額が大きくなります。

また不動産投資のもっとも大きなデメリットは、「空室リスク」と呼ばれる投資リスクです。入居者が見つからず空室となってしまえば、その間は家賃収入が全く入りません。空室リスクへの対応としては、いくつもの物件を所有することでリスクを分散させるという方法が効果的です。

加えて、物件のメンテナンスや退去時のクリーニング、また定期的なリフォームなど、物件価値を維持するためのコストが時折必要です。

 

 

相続税対策に効果的な不動産運用方法

ここからは、不動産運用によって相続税対策をするための具体的なコツを解説します。

 

●価値が低い土地を購入する

まずポイントとなるのは、税額の決定のための基準となる「評価額」という考え方です。土地と建物それぞれについて「評価額」の考え方が異なりますが、ここでは、相続税の節税という観点から特に大切な、土地の評価額について解説します。

土地の評価額は一般的に、「路線価方式」によって決定されます。「路線価」とは、一つひとつの道路(=路線)について、その道路に面する宅地の1平方メートルあたりの標準価額をいいます。日本中の道路について、国税庁が路線価を定めています(参考:国税庁ウェブサイト)。

土地部分の相続税額は、時価(市場で売買される相場)ではなく路線価と、それをもとに計算される評価額によって決定されます。そのため、評価額が低い土地を購入すれば、その分だけ相続税額を抑えることができます。

形状が特殊な土地の場合、評価額が低くなります。代表的なものは「旗竿地」と呼ばれる土地です。旗竿地は、狭長い入り口だけが道路に面しており奥に通常の土地が広がっているというもので、様々な不便があるため、評価額が低く補正されます。

 

●小規模宅地等の減額の特例を活用する

さらに税額を抑える方法をいくつか解説します。

 

まず「小規模宅地等の減額の特例」があります。

これは、被相続人(=亡くなった方)もしくは被相続人と生計を同じくする親族が居住していた宅地で、面積が330平方メートル以下の場合に、相続税が80%減額される特例措置です。これはとても大きな減額です。

また居住用ではなく、そこで事業を営んでいた宅地については、同様の条件を満たせば、面積が400平方メートル以下の場合に80%の減額がなされます。ただし貸付用の宅地は別に要件が定められています。

 

●保有している土地に賃貸用の新築マンション・アパートを建築する

次に、「貸家建付地」として評価額を下げる方法があります。貸家建付地とは、土地の所有者みずからがそこに建物を建て、これを賃貸している宅地をいいます。土地と建物をみずから所有していても、そこに他人が居住しており、所有者としての権利が制限されるため、資産としての評価額が下がります。

貸家建付地の評価額を計算する際には、「借地権割合」、「借家権割合」、「賃貸割合」の三つの指標を使います。借地権割合は、路線ごとに国税庁が定めており、多くの住宅地で60%または70%です。借家権割合は一律で30%です。賃貸割合は入居率のことです。貸家建付地の評価額は以下のように計算します。

・貸家建付地の評価額 = 土地の評価額 × ( 1 - (借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合) )

 

 

●ワンルームマンションを購入して貸し出す

3つ目の方法は、ワンルームマンションを購入することです。冒頭部分でタワーマンションについて簡単に触れたこととも重なりますが、戸数の多い区分所有マンションでは、区分オーナーが土地を分割して所有するという考え方をしますので、その分だけ評価額が下がります。千万円単位の資産でも、預金として所有するよりはワンルームマンションを購入したほうが相続には有利です。

ワンルームマンションを購入する際に気をつけたいのが、利便性の高いエリアを選ぶということです。これにより空室リスクを抑えられ、安心して運用することができます。

 

●土地を分割して相続する

最後は分筆の工夫です。相続人が複数いれば、土地を工夫して分割(分筆)することによって、節税が可能な場合があります。具体的にはいくつかの方法があります。

もしも土地が二つの道路(路線)に面していれば、利便性から、その土地には高い評価額が与えられます。この場合には、分筆後の区画がそれぞれ一つの道路にしか面さないようにすることで、評価額を下げることができます。

角地についても、同じ理由から高い評価額が与えられます。角地を分筆する際に、角地ではなくなる区画については評価額が下がります。

路線が一つだけで角地でもないような通常の場合でも、あえて旗竿地を作るという工夫によって、評価額を下げることが可能です。

これらの方法で評価額が下がれば、それに応じて相続税額も下がることになります。

ただし、広い土地(三大都市圏で500平方メートル以上、それ以外で1,000平方メートル以上)については、「地積規模の大きな宅地の評価」という特別な価額評価が行われ、通常よりも評価額が低く抑えられる可能性があります。分筆によってこれが適用されなくなる場合があるので注意して下さい。

 

相続税対策として生前贈与するメリット・デメリット

次に生前贈与による相続税対策について解説します。生前贈与にはどんなメリット・デメリットがあるでしょうか。

 

●メリット

被相続人(親など)が相続人(子など)へ生前に直接贈与する際には、相続税ではなく贈与税が課されます。ここでポイントとなるのは、贈与税の基礎控除の範囲内で生前贈与を行えば非課税であることと、相続税よりも贈与税のほうが有利な場合があるということです。

■贈与税の基礎控除

年間110万円以下の贈与は非課税です。そのため、毎年110万円の生前贈与を繰り返せば、無課税で相続をすることができます。とはいえ、千万円単位の資産を全て無課税で生前贈与することは難しいでしょう。

■相続税よりも贈与税が有利な場合

仮に年間110万円を超える額を贈与しても、相続税を納めるよりも贈与税を納めるほうが有利な場合があります。

例えばある人が、成人している4人の子それぞれに対して、毎年500万円を贈与するとします。1人1回に課される贈与税は48.5万円です。これを10年間続ければ、2億円(500万円×4人×10年)の相続財産に対して1,940万円(48.5万円×4人×10年)の贈与税を納税します。

生前贈与を行わず全額を相続したとすると、2億円の相続財産に対して2,120万円(530万円×4人)の相続税を納税します。同じ資産価額に対し、生前贈与によって節税ができたということが分かります。

生前贈与のメリットとして、上記の他にも、特定の相手に確実に贈与ができるという点や、生前に贈与を済ませておくことにより相続人の間でのトラブルを避けられるという点があります。

 

・デメリット

生前贈与にはデメリットもあります。

もし不動産の形で保有している資産を贈与するならば、登記の移転に伴い、不動産所得税がかかります。不動産所得税については細かな計算方法は割愛しますが、資産価額の2%程度にあたります。これは相続においては課税されません。なお、登録免許税(2%)は贈与でも相続でも等しく課税されます。

また別の注意点として、生前贈与は、長期的に計画する必要があります。相続開始時点(亡くなった時点)から数えて3年前以降に、将来相続人になるだろうと考えられる人(推定相続人)に対して行われた生前贈与は、実質的な相続と見做され相続税の課税対象となります。

さらに、生前贈与により資産を移転したことが後から明確に証明できるよう、適切な記録を残すべきです。贈与契約書を交わすなどの形が一般的です。

 

相続税対策に効果的な生前贈与の方法

ここでは、相続税対策として効果的な生前贈与のコツを解説します。

 

●現金を毎年110万円ずつ贈与する(暦年贈与)

まずもっとも基本となるのが、基礎控除額である110万円以内の金額を、毎年コツコツと贈与していくということです。長く続ければ多くの資産を子や孫に残すことができ、基本的には課税対象となりません。もしも111万円以上の金額を贈与してしまったら、申告をして贈与税を納めましょう。

この際、被相続人(親等)が亡くなって相続を開始した際に、税務署からあらぬ疑いの目を向けられないために、贈与契約書を残しておくことが大切ですが、その書面の作り方には注意が必要です。もしも贈与契約に「1,000万円を10年に分けて贈与する」などの文言を含めてしまうと、実質的に1,000万円の贈与だとして贈与税が課されてしまいます。毎年、別個の契約書を交わすことが理想的です。

 

●相続時精算課税制度を活用する

次に活用できるのが、「相続時精算課税制度」という制度です。これは生前の贈与について、最大2,500万円をその時点では非課税とし、そのかわり相続の開始時(被相続人が亡くなった時)に、従来この制度によって非課税とされていた贈与を改めて相続として計算しなおし、金額に応じた通常の相続税を課す、という制度です。被相続人は60歳以上の父母または祖父母、相続人は20歳以上の子または孫でなければなりません。

一時的には贈与が非課税になるものの、最終的にさかのぼって相続税が課されるため、工夫のないままこの制度を活用しても節税効果はありません。また、いちど相続時精算課税制度を選択すれば、その後これを取りやめ110万円非課税の暦年贈与を行うということができませんので、注意が必要です。

この制度の有効な活用方法としては、賃貸物件を贈与するというものがあります。賃貸物件は保有していれば家賃収入が入り、将来的な相続財産が増えていく可能性があります。これを早めに贈与しておくことで、実質的に、将来的な家賃収入の蓄積を度外視し、物件の資産価額だけにもとづいて相続税を計算することができるようになります。

 

●配偶者に贈与する

3つ目に活用できるのが、贈与税の配偶者控除です。以下の条件を満たす贈与について、最大2,000万円まで贈与税が無税となります。

1 婚姻期間が20年以上の配偶者からの贈与であること
2 自分が住むための国内の居住用不動産、または居住用不動産を購入するための資金であること
3 贈与を受けた翌年の3月15日までに実際に居住し、またその後も引き続き住む見込みであること

通常の基礎控除110万円と合算すれば2,110万円ですが、配偶者控除は同じ配偶者につき1度しか適用できません。

 

●教育資金として贈与する

最後に、教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税制度があります。30歳未満の子供や孫が、祖父母や父母(直系尊属)から教育資金を一括して受け取ると、最大1,500万円まで贈与税が非課税となります。金融機関にて受取人名義の教育資金口座を開設して教育資金を預け入れ、その金融機関を通じて非課税申告を行う必要があるため、通常の贈与と比べ少し手間がかかります。

贈与されたお金の使途は教育目的に限られるため、実際に教育目的で資金を使用したことを示す領収書や明細書の提出が必要です。また30歳になるまでに使い切らなかった残りの資金については、通常の税率で贈与税が課されます。大きな金額を残してしまうと高額な納税をしなくてはいけなくなりますので、計画的に行うことが大切です。

 

さまざまな制度を組み合わせて活用し、節税効果を積み重ねる

今回の記事では、相続税を節税するための工夫としてどのようなものがあるのかについて、全体を見渡しながらポイントを解説しました。単純な生前贈与だけでなく、不動産投資を活用した方法や、贈与税の配偶者控除、教育資金の一括贈与など、色々な制度を活用できるということをお伝えしました。また不動産投資を行う際には、実際の相続が開始された際にその物件をどう分割するのか、あるいは相続時精算課税制度を有効活用できるかどうかといった点も、ぜひ検討しましょう。ひとつひとつが細かな制度であり、確認だけでも手間がかかりますが、これらを組み合わせることで全体として大きな節税に繋がります。

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