不動産投資は、空室が埋まらず予定していた家賃収入が入らないなどで失敗する場合があります。失敗の原因はさまざまで、投資する際はしっかり対策を講じなければなりません。
今回は不動産投資に失敗する原因や具体的な事例について紹介し、失敗を防止する対策もお伝えします。
目次
不動産投資で失敗といえるのは、売却により赤字になった場合です。不動産を購入して家賃収入により運用する間は赤字になる場合もありますが、最終的に売却して利益があれば失敗とはいえません。長期的に見て、総合的に赤字となった場合は不動産投資に失敗したことになります。
ここでは、不動産投資で失敗する場合について紹介します。
マンション投資は失敗しやすい?失敗する理由や事例、防止策紹介
不動産投資で利益を得る方法は、賃貸による収益を得るインカムゲインと売却益を狙うキャピタルゲインの2通りです。
このうち、家賃収入がなくインカムゲインの額が赤字の状態でも不動産投資が失敗したとはいえません。最終的に不動産を売却したときに黒字になれば、不動産投資は成功したといえます。
不動産投資の失敗とは売却で赤字が出た場合であり、以下の2つの場合が考えられます。
・家賃収入では黒字だったが、売却時に赤字になった
・家賃収入は赤字で、売却時も赤字になった
不動産投資は、このような赤字にならないよう対策を立てながら行う必要があります。
不動産投資に失敗する原因は、主に以下の3つが考えられます。
・返済計画など利益に関して失敗する
・物件選びで失敗する
・不動産会社選びで失敗する
利益は出ているものの、税金や維持費がかかり、返済計画がうまくできなかったなどで失敗する場合があります。また、条件の悪い物件を選んでしまったり、管理体制に問題のある不動産会社を選んだりして失敗するケースも少なくありません。
不動産投資に失敗する原因について紹介します。
利益に関わる失敗とは、家賃収入があるにもかかわらず、税金や維持費、ローンの返済に多く取られて利益が出ないといったケースです。
不動産投資では多くの税金が課せられます。不動産取得時には不動産取得税のほかに印紙税、登録免許税がかかり、2年目以降は固定資産税や都市計画税、所得税、住民税など多くの税金を支払わなければなりません。
また、不動産には維持費もかかります。共用部分の光熱費や設備が壊れた場合の修繕費、退去者が出た際の部屋のクリーニングやリフォーム代などが必要です。長期的には、大規模な修繕が必要になるかもしれません。
これら税金や維持費の支払いを見越して計画を立てないと、不動産運用が危うくなります。
ローンの返済計画もさまざまな状況を考慮することが必要です。大きな支出が重なるなど想定外の事態が起こって返済が滞ることのないよう、余裕を持った返済計画を立てなければなりません。
間違えた物件選びにより、不動産投資に失敗する場合もあります。条件の悪い物件や競売物件など、空室が埋まらない物件を選んでしまうといったケースです。安さにばかり目を奪われて購入すると、古い物件で多額の修繕費がかかった、立地条件が悪くて空き家が埋まらないなどの問題が発生します。
大学が近くにあるなど需要がある物件の場合も、注意が必要です。例えば大学のそばにあることが唯一の強みである場合、大学が移転したら需要がなくなってしまいます。空室が埋まらなくなるリスクがあるでしょう。強みはひとつだけでなく、駅からアクセスが良い、日当たりが良いなど、入居者が集まる強みを複数持つ物件を選ぶようにしてください。
不動産投資でインカムゲインを狙う場合、不動産会社に管理を委託する場合も多いかと思います。その際、管理体制に問題のある会社を選んでしまうと、不動産投資の失敗につながりやすくなるでしょう。
空室が続く場合に適切な対策を取らず、ただ広告を出すだけの不動産会社は要注意です。家賃収入が入らないだけでなく、広告費がかさんで出費が増えることになりかねません。
不動産投資の失敗例はさまざまです。空室が埋まらず収入が入らなかったり、空室は埋まっても家賃の滞納があったりなど、多くの事例があります。
修繕費が予想以上にかかった、物件の価値が下がって入居者のニーズがなくなったなど、当初は想定できなかったことが起こる場合もあります。
不動産投資に失敗した事例を確認してみましょう。
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不動産投資で最大のリスクといえるのは、空室が埋まらないことです。入居者が集まらなければ家賃収入が入りません。ローンの返済は家賃収入をあてにしている場合、資金繰りに困ることにもなるでしょう。
現在は入居者がいても、退去したあとすぐに空室が埋まるとは限りません。空室が出るリスクを想定してローンの返済計画を立てる必要があります。
空室は埋まっても、入居者が家賃を滞納する場合があります。収入が途絶え、ローンの返済に困る事態になりかねません。このような場合に備え、入居者に家賃保証会社との契約を義務付けるケースもあります。家賃保証会社とは、万一入居者が家賃を滞納した場合、家賃を立て替える会社です。
家賃保証会社との契約は費用がかかるため、入居者の負担になります。費用の負担は入居率に影響する可能性もあり、滞納のリスクと比較検討して利用を考えるとよいでしょう。
築年数の経過で物件の価値が下がり、入居者が集まらなくなるケースもあります。特に新築物件の場合は価値が下がるのも早く、当初の家賃では空室が埋まらなくなる場合が少なくありません。家賃を下げざるを得なくなり、家賃収入が減ってしまいます。
経年とともに物件の価値が下がることを見越し、駅から近いなど築年数に影響されない居住のメリットがある物件を選ぶことが必要です。
購入後に修繕費が予想以上にかかる場合もあります。安く購入した物件にありがちで、老朽化による修繕費が高額になるケースです。そのため、中古物件を購入する場合は大規模修繕の履歴があるかを必ず確認しなければなりません。
修繕履歴がない場合、購入してから設備の故障などで大掛かりな修繕が必要になる可能性があることを把握しておきましょう。
どの不動産でも、天災などで予想外の出費が必要になる可能性があります。空室がなく十分な家賃収入があっても、火災による損害で入居者が退去し、修繕の費用を工面できず不動産投資に失敗するというケースもあります。
災害に備え、保険に加入することは必須です。火災保険と地震保険には必ず加入しておきましょう。火災保険は幅広い災害を補償する保険ですが、地震は補償の対象外です。現代はどこで大きな地震が起きてもおかしくありません。2つの保険の加入は不動産投資に不可欠です。
不動産会社の言うことを鵜呑みにしてしまい、損失を出してしまう場合があります。営業マンから優良物件だと勧められ、よく確認せずに購入してしまうといったケースです。不動産投資に対する知識が十分でない場合、ありがちな失敗といえるでしょう。
不動産会社は、顧客の利益も考えて取引するところばかりとは限りません。中には自社の利益だけを考え、契約を締結するために良い情報のみを提供する場合があるので注意が必要です。
不動産投資に失敗する人には、いくつかの特徴があります。計画性がない、自分で勉強しようとしないといった点です。計画性がないと収入を使い過ぎてしまうことにもなり、勉強不足は不良物件をつかんでしまう可能性が高くなるでしょう。
また、投資目的が明確でない場合も不動産投資に失敗しやすくなります。
不動産投資に失敗しやすい人の特徴を見ていきましょう。
計画を上手に立てられない人は、不動産投資に失敗しやすくなります。インカムゲインを得る不動産投資は事業のひとつであり、収支の計画をしっかり立てながら運用しなければなりません。
不動産投資では毎月のローン返済や修繕費などの費用が発生するほか、固定資産税もかかります。設備の故障など、急な支出を要する場合もあるでしょう。
計画性がないと、これらの出費を考慮せず家賃収入を使い過ぎてしまう可能性があります。せっかく家賃収入があっても、計画性がないばかりに赤字になって不動産投資に失敗する場合もあるでしょう。
自分で勉強しようとしないのは、不動産投資に失敗する人の特徴です。不動産投資は不労所得を得る楽な投資と勘違いしている場合、勉強不足になりやすいでしょう。不動産投資では結果的に不労所得にはなっても、勉強しなければ所得を得るための土台を作れません。
適切な物件を見極める能力を養わなければ、不良物件をつかんで失敗するのは目に見えています。物件を選ぶのは自分であり、投資に関する知識を身に付けることは大切です。
投資目的が明確でない場合、不動産投資に失敗しやすくなります。例えば投資目的が「家賃収入を得てローンを返済し、その後不労所得を得て資産を形成すること」にある場合、確実に家賃収入が得られる物件を厳選するという行動に出るでしょう。
そのような目的が曖昧な場合、つい安い物件が得かと考えて購入してしまう可能性があります。安く購入できても、古い建物では入居者がなかなか現れない場合があるでしょう。入居者を募るために修繕をすると多額の費用が必要になり、結局高くついてしまうことになります。
不動産投資で運用が赤字でも、最終的に売却して黒字であれば失敗にはならないことを最初に説明しました。空き家が埋まらずローンの返済に行き詰まった場合でも、売却をしてローンも完済し、手元に資金が残れば失敗とはいえないでしょう。
しかし、年数が経過して価値が下がった物件が購入時より高く売れるとは限りません。
ここでは、不動産投資に失敗した場合に起こることを紹介します。
不動産投資の運用で家賃収入が思うように得られないと、借金が残りローンの支払いに追われる場合もあります。不動産を売却してもローンが完済できない、いわゆるオーバーローンの状態にある場合、抵当権を設定している金融機関が不動産の処分を認めません。ローンが支払えないと、最悪の場合競売にかけられる可能性があります。
そのような場合、「任意売却」により市場価格で売却することが可能です。任意売却とはローン債権者である金融機関と交渉し、ローンの残った不動産の抵当権を抹消してもらい、市場取引で売却する方法です。
任意売却は強制競売にかけられる場合と比較し、より早く高い価格で売却できる可能性があります。
不動産投資に失敗すると売却してもローンの支払いが残り、支払いが難しくなる場合があります。残った負債を支払えない場合、負担を減らしながら返済できるのが「任意整理」です。任意整理とは債権者と債務者が支払い方法や利息の軽減を交渉する方法で、基本的に弁護士などの専門家に依頼して行います。
任意整理は、住宅ローン返済のために消費者金融などから借金もしている、元本部分がまったく返済できない、収入はあるが返済に追われているといった場合に有効です。
任意整理では、債権者に次のような依頼をします。
・不要な取立て業務の停止
・毎月の返済金額を軽減
・違法な利息の請求を停止
・過去に過払い金があれば返済請求
任意整理は誰でもできるわけではなく、以下のような条件が必要です。
・安定した収入がある
・今後3〜5年前後の間に完済が可能
・必ず返済する意志がある
任意整理しても借金の金額は減りませんが、毎月の返済額が減って返済しやすくなるのがメリットです。
任意整理は必ずできるわけではなく、債権者との交渉がうまくいかない可能性もあります。そのような場合に検討するのが、個人再生です。個人再生とは裁判所に申し出て再生計画の認可を受け、借金の元本を大幅に減額してもらう手続きです。減額された借金は、およそ3年ほどかけて支払います。
自己破産を選ぶと一定の価値がある財産は処分の対象になりますが、個人再生ではそれらを手放さず借金を減らせるのがメリットです。
マイホームを手放さずに借金を解決できる「住宅ローン特則付き個人再生」もありますが、投資用不動産には適用されません。
個人再生を利用しても借金を返せない場合、最終的には自己破産を選ぶことになるでしょう。
自己破産を申し立てて裁判所から免責決定を受けると、借金の支払義務がなくなります。しかし、車や生命保険など、価値のある財産は手放さなければなりません。
個人の場合は生活に必要な財産まで差し押さえられることはなく、99万円までの現金を含む財産や20万円以下の預貯金、生活必需品などは手元に残すことができます。
なお、任意整理や個人再生、自己破産を選ぶ場合、5年〜10年ほどは信用情報に記録が残り、新たな借入れやクレジットカードの契約はできなくなることに注意しましょう。
また、個人再生や自己破産を選ぶ場合、官報に名前や住所が掲載されます。
不動産投資に失敗しないためには、心がけたいポイントがあります。まず、物件は実際に現地に出向き、自分の目で確認することが大切です。
見に行けない場合は、写真や動画を撮影してもらうなど、物件の確認は必ず行いましょう。担当者の言葉だけで判断しないことが大切です。
ここでは、不動産投資に失敗しないためのポイントを紹介します。
購入する物件は必ず現地に出向き、自分の目で確認しなければなりません。資料などの情報だけではわからないことも多いためです。特に、物件周辺の雰囲気や生活利便性、物件の現状などは、現地に行かなければよくわからない内容です。
実際に出向くことで物件を借り居住する人の目線に立つことができ、どのような人がターゲットになり、賃貸需要があるかがわかります。
物件の周辺や最寄駅の雰囲気は、現地に行くことで多くのことが確認できます。若年層が多く賑やかな雰囲気か、ファミリー向けで落ち着いた雰囲気か、単身者に便利な環境か、女性の一人暮らしでも安心して暮らせるかといったことがチェックできるでしょう。
最寄駅までの動線が良いか、交通量が多く騒音や排気ガスの影響はないかなど生活の利便性も、現地に行かなければわかりません。
建物の現状も、写真で見るのと実際に行って確認するのとでは異なります。写真の写り具合で新しく見えた外観も、実際に見ると意外に古く暗い印象だったという場合もあります。写真ではわからない、細かな損傷や劣化も確認できるでしょう。
室内の日当たりや向かいの建物との距離感なども、実際に建物の中に入らなければわからないことです。
修繕しなければ入居者を集めるのが難しい場合は、値段交渉をする材料になるでしょう。
物件が遠方であったり、仕事で忙しかったりなどで現地に出向けない場合もあるでしょう。そのような場合は、不動産業者に写真や動画の撮影を依頼してください。できれば、実際に自分で現地確認をするのと同じ目線で撮影してもらうとよいでしょう。
その際は、以下の部分を重点的に撮影してもらいます。
・最寄駅や周辺の雰囲気(昼と夜)
・最寄駅から物件までの道のり
・物件の外観
・駐車場やゴミ置き場など共用部分
・エントランスから住戸までの動線
・エレベーターや宅配ボックス、エアコンなどの設備
・住戸の眺望や日当たり
Googleマップなど、写真付きのオンライン地図を確認するのも有効です。歩行者の目線で周辺を見渡せるため、周辺の雰囲気や導線を確認することができます。
実際に住んでみた感想は、住民の口コミを検索してみるとよいでしょう。ネットで地名や駅名、「住みやすさ」などのキーワードで検索すれば、実際に住んでいる人の口コミやブログなどを確認できます。ただし、個人の感想であるため、あくまで参考にする程度にするのがよいでしょう。
実際に現地に行って確認することが理想ですが、できない場合は自分の五感で確認するのと近い状態にするため、とり得る手段を活用することが大切です。
失敗例でも説明したように、担当者の言葉だけを鵜呑みにして判断するのは危険です。自分でも情報を収集し、勉強して考えることが大切です。
確かに、顧客の利益も考えて行動する営業マンはいます。しかし、すべての営業マンがそうとは限りません。自分の成績を上げることだけを考え、物件のデメリットをあえて隠す場合もあるでしょう。
なかなか売れない不良物件を売りたいために、実際より優良であると誤認させるような説明をするかもしれません。メリットばかりを伝える営業マンは、疑いの目で見る必要もあるでしょう。
良い話を持ちかけられても鵜呑みにせず、自分で確かめることが大切です。
利回りが良いということだけで判断するのは、失敗の原因になります。購入時は高利回りでも、物件に何らかの問題があり空室が埋まらず利回りが下がる可能性はあります。
不動産投資における利回りとは、物件への投資額に対する1年間の家賃収入の割合のことです。利回りには表面利回りと実質利回りがあり、不動産会社が情報として出している利回りは、一般的に表面利回りです。
表面利回りは想定する年間家賃収入と購入価格の割合を示したシンプルな利率ですが、実際の不動産投資では、購入してからも修繕費や管理費などさまざまな支出が発生します。現在の入居者が退去した場合には、空室期間が発生する可能性もあるでしょう。そのため、不動産会社の示す表面利回りだけで判断するのはリスクがあります。
さまざまな諸費用も加えた実質利回りで検討することが大切であり、空き家になる懸念材料はないかのチェックも必要です。
【不動産投資の利回り】計算方法や最低ライン、物件選びのポイント
不動産投資は順調に入居者が集まれば家賃収入が不労所得になり、資産形成として有効な投資方法です。しかし、空室が埋まらない、家賃を滞納されるなどのリスクはあり、上手に収支の計画を立てなければ失敗する可能性もあります。
失敗しないために重要なのは、最初の物件選びです。自分でも不動産投資についてよく勉強し、不動産会社の言葉を鵜呑みにせずにしっかり自分の目で見て判断するようにしましょう。
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J.P.RETURNSホームページはこちら⇒https://jpreturns.com/
J.P.Returns株式会社
執行役員 コンサルティング3部 本部長
J.P.RETURNS執行役員。
J.P.RETURNSに入社後、設立初期より営業部を統括、本部長を務める。以降融資担当部長、流通事業部では仕入れ先開拓業務に従事、後に管理業務部等を歴任。数百戸の投資用区分マンションを販売、自身でも6件の不動産を所有、運用している。現在は自社セミナーを始め、様々な会社との協賛セミナーの講師を務めながら、常に世に発信する立場で不動産業に従事している。
【書籍】
日本で最も利回りの低い不動産を持て!
マンション投資2.0
【ブログ】
室田雄飛のモグモグ不動産投資ブログ
大学在学中に家庭教師のアルバイトをきっかけにデイトレーダーへ転身。24歳で資産運用法人を設立する。25歳から大手投資用マンションディベロッパーと業務提携後、およそ6年間にわたり資産運用アドバイザーとして活躍。その後、大手不動産仕入れ会社で販売統括責任者として従来の投資用物件の流通システムを革新するプロジェクトを立ち上げる。国内最大規模の投資イベント「資産運用EXPO」で登壇実績があり、同業他社からも多くの見学者が立ち見の列を作った。2020年にJ.P.RETURNSに参画。オンラインでの商談やWEBセミナーを導入し、コロナ禍でも年間300件以上の顧客相談を担当している。
【保有資格】
宅地建物取引士、ファイナンシャル・プランナー(AFP)