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不動産投資を勧められる際、不動産投資には節税効果があるという話を耳にすることもあるでしょう。しかし、節税効果を実感しやすいケースと実感しにくいケースがあるため、節税のみを目的として不動産投資を始めてしまうと思ったよりも効果がないと感じるかもしれません。
本記事では、不動産投資に興味がある方に向けて、不動産投資での節税の仕組みと節税効果、不動産投資の注意点を詳しく解説します。節税方法を検討している方は、当記事をぜひ参考にしてください。
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目次
不動産投資に興味がある方の中には、なぜ不動産への投資が節税術となるのか、疑問に思うこともあるでしょう。ここでは、所得と収入・経費や減価償却費、そして損益通算について分かりやすく解説します。
なお、所得税の計算方法やシミュレーションに関しては、下記の記事でより詳しく説明していますので、ぜひご覧ください。
不動産投資をしている場合、所得はどのように計算されるのでしょうか。所得とは簡単に言えば「不動産収入から経費を引いた額」です。
不動産収入とは、一般的に賃貸物件を運用して入居者から得られる家賃を指します。この収入から経費を引くことで、実際に投資家が手にする収益、すなわち「不動産所得」が明確になります。
確定申告で主に計上できる経費は以下の通りです。
上記の経費を計上すると、「課税所得」を減らせます。結果として支払う税金が少なくなれば、節税効果を実感できるでしょう。
「減価償却費」とは、不動産投資の中で節税効果を高める重要な経費の1つです。建物は時間が経つとともに経年劣化し、価値が減少します。この価値の減少分を経費として計上するための項目が「減価償却費」です。
減価償却費の計算では、建物の「耐用年数」が基準となります。例えば、5,000万円で購入した建物の減価償却期間が5年だった場合、1年あたり1,000万円が経費計上できます。これにより、実際にお金を支出していないにもかかわらず、経費として認められるのが減価償却です。
注意すべきなのは、減価償却費が適用されるのは「建物」の部分だけだという点です。「土地」は経年劣化しないと考えられるため、減価償却の対象にはなりません。
「損益通算」とは、不動産投資で発生した赤字を他の収入と相殺する制度です。会社員などの給与所得者は、収入から不動産投資による損失分を差し引いた金額で所得税や住民税を計算します。
【赤字額の算出方法】
赤字額=家賃収入-必要経費
例えば、給与所得分が600万円で不動産所得分が-150万円だった場合、実質的な税務上の所得は450万円です。損益通算により課税所得額が減少し、納税額を減らせます。
不動産投資では、複数の税金制度を巧みに組み合わせて活用すると、節税のメリットを享受できます。以下では、節税につながりやすい4種類の税金と、それぞれの節税ポイントについて解説します。
所得税は、本業の給与収入や不動産投資による家賃収入など、さまざまな収入の合計に課される税金です。不動産投資と所得税の関係を理解すると、節税効果を得やすくなります。
会社員が不動産投資で節税できる大きな要因は、給与収入と不動産所得の損益通算です。もし、経費が不動産からの家賃収入を超えて赤字になった場合は給与所得と相殺されるので、課税対象所得額が減少し、所得税の支払い額が軽減されます。
以下は、所得税の計算式です。
所得税額=(給与収入+不動産所得+事業所得等)×所得税率-税額控除額
所得税率や控除額の詳細は、国税庁のHPから確認できます。
なお、物件を保有している間は減価償却の経費で課税所得を抑えられるものの、売却する際には譲渡所得が増加します。ただ、5年以上保有した物件の譲渡所得税率は約20%であり、給与所得が695万円以上ある方にとっては通常の所得税率よりも低くなります。そのため、不動産を計画的に活用できれば節税効果の最大化が見込めるでしょう。
住民税は、都道府県や市区町村などの自治体サービスを支える税金です。不動産投資による所得が増減すると、住民税の課税額にも影響が出ます。
住民税を構成する「均等割」と「所得割」の内訳は以下の通りです。
均等割 | 所得に関わらず一律の金額 | 一律5,000円 |
---|---|---|
所得割 | 所得額に応じて10%を課税 | 都道府県民税4%+市町村民税6% |
出典:総務省「個人住民税」
不動産投資を行っている方には「所得割」が関わってきます。この部分は所得に応じて課税されるため、所得が増えると課税額も増加する一方、所得が減った場合は住民税も連動した減少が期待できます。
不動産投資は、相続税対策や贈与税対策としても有効です。相続税では、一般に土地や建物を実売価格よりも低い評価で計算する傾向にあるため、現金よりも投資不動産での相続が有利とされます。建物評価額が投資不動産購入後徐々に下がる特性も加味すると、課税額は50~70%程度まで抑制できる可能性があります。
さらに、贈与税の節税方法として「相続時精算課税制度」が存在します。当該制度を利用すると、一定の条件下で贈与税を大幅に節税することが可能です。例えば、2,000万円のマンションを贈与した場合、制度の利用により贈与税が発生しないケースも考えられます。ただし、デメリットや制約もある制度のため、活用前に詳細の確認が必要です。
不動産投資における法人の税金には、主に法人税・法人住民税・法人事業税があります。法人が不動産を持っている場合、タックスマネジメントと呼ばれる方法で実際のお金の流れとは異なる会計の流れを作ることが可能です。
法人は他の事業で収益が悪化した場合でも、不動産投資による課税のコントロールでリスクをカバーできるのが大きな特徴となります。例えば、事業計画とうまく組み合わせて減価償却を計上し当該年の総合課税所得を下げられるなど、税金を有利にコントロールすることも可能です。
また、高額所得者の場合は、個人で不動産投資を行うよりも法人として不動産投資を行った方が税率が低くなるケースが少なくありません。所得税は課税所得が増えると税率も上がるのに対し、法人税は上限が23.2%に制限されているためです。目安として、所得税の税率が33%を超える900万円以上の課税所得がある場合は、法人化すると節税効果が期待できるでしょう。
ただし、法人化を検討する際は初期費用や税理士への依頼費用、物件名義変更の手間などのデメリットも考慮する必要があります。
必要な条件さえそろっていれば、不動産への投資で節税することが可能です。しかし、世の中では「不動産投資の節税効果は嘘だ」という意見も少なくありません。では、実際のところはどうなのでしょうか。
ここでは、不動産投資の節税効果に懐疑的な意見が出る背景や理由を、4つのポイントから解説します。
不動産投資における節税対策では、主に「減価償却」を活用します。減価償却は、取得した不動産を使用できる期間に合わせ、経費として毎年一定の額を計上する方法です。減価償却をうまく利用すると不動産所得がマイナスになり、年間の課税所得を低く保てる結果、所得税や住民税の負担軽減が可能です。
しかし、度重なる法改正により、減価償却の方法や効果が変更されてきました。かつて利用できた「定率法」は廃止され、現在利用できるのは「定額法」のみです。そのため、投資家の中には以前より節税が難しくなったと感じる方もいます。
ただし、減価償却自体の有効性は変わっていません。特に給与所得が高く、所得税率も高い方は、適切に節税策を行えば大きな効果を得られます。税制改正は、節税の「向き・不向き」を明確にしたと捉えるとよいでしょう。
不動産投資初心者の多くが「節税」という言葉に魅かれる傾向にあります。事実、不動産会社の営業マンから「節税のメリットがある」というセールストークを受け、投資を決意する方も少なくありません。しかし、節税効果を最大限に享受するには、その仕組みを深く理解する必要があります。
高い節税効果を期待できるのは、課税所得が900万円以上で所得税率が33%以上の高額所得者のケースです。このような状況を理解せずに投資を開始すると、予想していた節税効果を実感できない場合があります。
ただし、不動産投資のメリットは節税だけにとどまりません。正確な知識を持ち、計画的に投資を行えば、その他のメリットも享受できます。節税だけに目を向けず、全体的な投資の流れやメリットをしっかりと学ぶことが、成功への第一歩です。
不動産投資と税金の関係を考える際、多くの方が「所得税や住民税の軽減」にのみ注目する傾向にあります。確かに、所得税や住民税の軽減は大きなメリットとなるものの、それだけが節税の効果ではありません。
不動産投資では税金額の軽減だけでなく、課税時期を後ろにずらすことによるタックスマネジメントの効果も重要です。さらに、多額の相続資産・相続財産がある場合、適切な対策を取れば相続税や贈与税の軽減も視野に入れられます。
不動産投資の節税効果を完全に享受するためには、これらの幅広いメリットへの理解が重要です。節税の本質を深く知り戦略的な投資を進めることで、より多くのメリットを実感できるでしょう。
不動産投資を始める際、新築物件のフルローン購入や高い返済比率が背景にあると、月々の赤字、いわゆる「持ち出し」が発生します。不動産投資の初期段階では、赤字経営となるケースが少なくありません。
赤字分は給与所得との損益通算によって課税所得が圧縮されるため、節税効果が期待できます。ただ、毎月の赤字に直面すると節税効果があっても体感しにくく、「お金を増やしたくて始めたのに、実際は毎月赤字が出る」という状況に悩む方が多くいます。
しかし、不動産投資のメリットは節税だけではありません。例えば、レバレッジ効果を活かして資産形成ができることや生命保険替わりになることなど、多くの利点が存在します。投資を成功させるためには、赤字経営の時期も含めて全体のメリット・デメリットを理解し、長期的な視点での戦略が重要です。
どのような方や物件でも、不動産投資で節税効果が得られるわけではありません。節税対策として不動産に投資する場合は、「どのような方が向いているのか」「どのような物件を選ぶべきなのか」という2点が重要です。
ここでは、不動産投資で節税に向いている人・物件について解説します。
節税に向いているのは、課税所得が900万円以上の方です。給与所得が高い方は所得税率が33%~45%となるため、不動産投資による課税所得の圧縮から節税効果を得やすくなります。また、相続資産、特に現金の相続資産を多く保有している方も、相続税や贈与税の節税対策として不動産投資が有効です。
反対に、課税所得が900万円以下の方は、節税目的での不動産投資のリターンを期待するほど得られない可能性があります。不動産投資には銀行の借金や予期せぬ出費のリスクもあるため、節税だけでなく収益性を意識した物件選びが必要です。
節税に向いているのは木造築古物件です。減価償却額が大きい物件では課税所得を大きく圧縮できる点が理由として挙げられます。
木造物件の法定耐用年数は22年です。他の構造物よりも短いため、同じ不動産価格・同じ築年数でも減価償却額が大きくなります。築年数が法定耐用年数を超えている場合、4年で減価償却が可能です。
しかし、節税に適しているのは木造物件だけではありません。耐用年数が長いマンションの一部も節税に有効です。例えば、タワーマンションでは階数が高いほど価格が上がりますが、土地評価額は高層階でも変わりません。そのため、建物価格の大部分を減価償却でき、節税効果が期待できます。ただし、長期間保有して黒字化すると納税義務が発生するので注意が必要です。
不動産投資は節税の手段として魅力的ではあるものの、失敗を避けるためには注意すべき点がいくつか存在します。ここでは、節税を考えて不動産投資を進める際のポイントを、4つ解説します。
不動産投資を行う際、節税のみを目的として赤字経営を続けるのは推奨できません。経年による不動産の劣化や維持の困難さが出たとき、経済的負担が増大するためです。また、贈与や相続を考慮した場合、事業を引き継ぐ子どもや孫にも大きな負担をもたらす可能性があります。
重要なのは「不動産投資で利益を上げること」です。利益が出れば税金を納める義務も生じるものの、その納税額を適切に抑えればメリットのほうが上回るケースが珍しくありません。専門家、例えば税理士に相談して節税のアドバイスを受けつつ、節税に頼らずに利益がでる体制構築に注力をしたほうがよいでしょう。
節税の方法は不動産投資のみに限られません。例えば、個人型確定拠出年金「iDeCo」の活用により、税制面での優遇を享受できます。また、人によっては個人年金保険への加入で、節税効果を得ることも可能です。さらに、家庭の構成や扶養する親族の状況によっても節税のチャンスは広がります。
重要なのは、各節税方法の特長や制度を理解し、それをもとにして、もっとも適切な手段を選択することです。ライフスタイルや将来設計に合わせて、効果的な節税策を選ぶよう心がけましょう。
不動産投資による節税効果には限界があります。物件購入の初年度は、登記費用や火災保険料などの初期費用により節税効果が大きくなるケースが一般的です。しかし、2年目以降は経費の大部分が初年度で消費されているため、節税効果は減少します。また、減価償却期間が終了すると税務上の収益が増加し、所得税が大きくなる点にも注意が必要です。
さらに、融資の元金返済は経費化できません。結果として減価償却費よりも元金返済額が上回る「デッドクロス」が発生し、キャッシュフローが赤字にも関わらず、会計上は利益が出ているために税金支払いが発生することで資金繰りが厳しくなる可能性もあります。不動産投資では起こり得るリスクを理解した上で長期的に計画し、対策を練っておくことが大切です。
不動産投資を行う際、不動産売却時の税負担も考慮することが重要です。減価償却費を利用することによる節税は可能ですが、物件売却時にはその影響がデメリットとして現れるケースが往々にしてあります。
例えば、土地2,000万円・建物1,000万円で物件を売却した場合です。減価償却により建物の価値が0円となっていれば、建物を売却した金額の1,000万円は利益として計上され、譲渡税が課税されます。
譲渡税の税率は、所有期間が5年以下なら39%、所有期間が5年以上であれば20%です。譲渡税は分離課税のため、他の経費との損益通算はできません。したがって売却を考える際には、この税負担もしっかりと計画に入れる必要があります。
不動産投資で節税できるというのは嘘ではないものの、節税だけを目的として不動産投資を始めると、思ったほどの節税にならないケースがあります。課税所得が900万円以上の方や、現金の相続資産を持っている方は不動産投資による節税の効果を実感しやすいでしょう。
ただし、不動産投資では無限に節税効果を得られるわけではありません。不動産投資についての知識を身につけながら、長期的な視野を持って投資を行うことが大切です。
J.P.Returns株式会社
執行役員 コンサルティング3部 本部長
J.P.RETURNS執行役員。
J.P.RETURNSに入社後、設立初期より営業部を統括、本部長を務める。以降融資担当部長、流通事業部では仕入れ先開拓業務に従事、後に管理業務部等を歴任。数百戸の投資用区分マンションを販売、自身でも6件の不動産を所有、運用している。現在は自社セミナーを始め、様々な会社との協賛セミナーの講師を務めながら、常に世に発信する立場で不動産業に従事している。
【書籍】
日本で最も利回りの低い不動産を持て!
マンション投資2.0
【ブログ】
室田雄飛のモグモグ不動産投資ブログ
新卒で入社した大手投資用マンションディベロッパーで、歴代最高売上を記録。その後、財閥系不動産会社で、投資物件のみならず相続案件、法人の事業用物件、マイホームの購入や売却といった様々な案件を経験。 2018年にJ.P.RETURNSの新規事業部立ち上げに参画。また、セミナー講師として、延べ100回以上の登壇実績を持ち、年間300件以上の顧客相談を担当している。
【保有資格】
宅地建物取引士、ファイナンシャル・プランナー(AFP)