人体には自身の身体を修復、回復するための力があります。
身体を鍛えれば筋肉が付き、鍛錬を積めば身体は頑丈になり、修業を積めば精度の高い技術が身に付きます。
この一連のサイクルは全て「刺激」が入る事により身体が回復し、強くなり、覚えます。
1888年、ドイツの科学者ヒューゴ・シュルツは少量の毒物がイースト菌の成長を加速させる事を証明します。
「全ての物質は、少量であれば刺激し、適量であれば抑制し、多量であれば殺傷する」
と研究の結果を結論付けています。
少量の「刺激」が人体に反射し、いかに有効に働くかは様々な事実で証明されています。
例えば運動です。1日15分の激しいエクササイズをするだけで心疾患で死亡するリスクは45%、死亡する確率自体も30%も下げられると複数のデータが証明しています。
実は運動するとなぜ健康になるのかは明確には解明されていません。
しかし一定の「刺激」により身体が反応し健康になる。これについては間違いありません。
サウナは70度以上の高温に身をさらすと深部体温が上がり心拍数が120bpm程度まで上がります。
この効果は軽いジョギングに匹敵します。
実際週に2~3回サウナを利用すると循環器系の死亡リスクが27%も下がります。
さらに4~7回の利用では50%まで下がるそうです。
アルツハイマー病にかかるリスクに至っては65%も確率が減少します。
これも一定の刺激が与える人体の回復効果といえるでしょう。
針治療も同様です。針という異物が身体に入る事で身体が反応します。
針が刺さった事により直接効果が生まれている訳でも、針に薬が塗ってあるわけでもありません。
針が刺さった周りの組織が反応しある種の炎症を引き起こします。
この炎症により血行が促進され回復の為のスイッチが入り身体を自然に修復するのを助長します。
身体に良いとされるポリフェノールですが、抗酸化作用があるといわれています。
しかし実はポリフェノールの抗酸化作用は弱く、体内に入ると肝臓が分解してしまうそうです。
ポリフェノールは少量の毒物と同様で、抗酸化作用よりも身体に一定の反射を与える効果が大きいのです。
身体は怪我をしたり、異物が入ったりすると炎症を起こします。
炎症が起こるのは身体を回復させるための必要な工程だからです。
ただ、長引く炎症は逆にダメージを与えてしまいます。
スポーツでも「ハードに訓練し、それ以上にハードに休憩せよ」といいます。
ずっとダメージを与え回復のタイミングを与えない場合は効果がなくなり、ダメージを蓄積して悪化してしまい逆効果となってしまいます。
少量の弱らせたウイルスを身体に取り込むことでウイルスの抗体を身体の中に作ってしまう考え方です。
少量の「刺激」により身体が反応し、回復し、抗体を作るのです。
この考え方は様々な事に転用できるでしょう。
例えば社会に何も問題が起きなければ対応力は育ちません。
身体でも、精神面でも、社会システムですら少量の刺激は成長のため、より強くなるためには必要なもので、このスイッチが入る事で繰り返し進化していくということです。
本当にウイルスが怖いのであれば一日中無菌室にいれば安全です。
一種の「苦痛」は「回復」の元であり、アンチエイジングの元になるという事です。
ドイツの哲学者ニーチェは「私を滅ぼすに至らない全てのことが、私を強くする」といっています。
トマトを甘く育てるには、ギリギリの量の水を与えるのが効果的だそうです。
一定のストレスや苦痛、毒などは身体を強くし、若返らせ、健康な状態を維持するには必要不可欠なのです。
人間は真っ白な部屋に入れられると資力を失うそうです。
刺激がないと人は目が「見えなく」なるのです。
難のない人生を無難な人生といいます。難のある場合を「有難い」といいます。
エアコンの効いた清潔な部屋で安全に育てれば子供はきちんと育つのでしょうか?違いますよね。
「ホルミシス」一定の刺激を自分に与え、自分を強くしたり、健康にしたり、成長させたり、若返らせるには、人間にも社会にも非常に重要な考え方なのかも知れませんね。