┃インカムゲインとキャピタルゲイン
前回、価格の下落リスクに触れたところで終わりましたが、不動産は価格が上がる事もあります。
不動産投資において、キャピタルゲインという売却時に得られる利益があり、この利益は物件の購入価格が相場より安く購入できたり、不動産価格が経済状況が良くなったことで上がったり、不動産需要の増加などによって上昇しないかぎりは大きな利益はなかなか取れません。
価格の変動による利益は不動産そのものの力というよりも、経済状況などの外部要因によって生まれる利益です。
よって経済状況が読み切れない以上は、キャピタルゲインを確実に得るのは難しいという事になります。
人口が爆発的に増える、または都市の人口集中による大きな人口流入や、高度成長期にあたる時期で積極的に開発が入り、急激な都市化が進むなどのよほどわかりやすい状況があるのであれば値上がりもある程度の精度で予想もできますが、日本の不動産でキャピタルゲインを十分に得るのは投資として非常にハードルが高くなります。
日本で可能性があるとすれば、都心の立地条件の良い場所で市場価格より安く購入できたケースだけになるでしょう。
┃売却収益を得るためには
基本的には新築から人が住んだ時点で中古となり、古くなるほどに価格は下がっていきます。
この価格の下落幅は地域によって異なります。
当然都心部の利用価値の高い不動産は、土地、建物、マンション、オフィスや店舗に関わらず、価格は値下がりを起こしにくくなります。
不動産は購入した時点では、価格に対してローンを満額で組んでいれば不動産価値とローンの残債が同額、釣り合った状態からスタートします。
しかし、不動産の価値がローンの償還の速度を追い越して下がってしまえば、売却が思うようにはできなくなります。
売っても損にしかならないという事です。
基本的には古くなればなるほど価格は下がる訳ですから、この価格の下落がどれくらいのペースで落ちていくのかを、物件ごとに近隣の売買相場を年代ごとに分けてよく調べておく必要があります。
実に不動産投資で失敗した人のほとんどがこの価格の下落による損失で失敗しています。
価格が上がるなどと業者から事前に説明を受けている場合は慎重に判断してください。
日本の不動産は基本的にはまず価格が上昇することはありません。
例え価格がある程度さがったとしても、残債よりもはるかに高く売れるのであれば利益になります。
10年後の残債と築10年経った時の売買相場、20年後の残債と築20年経過した時の相場をよく調べておけばほとんどの場合にはそのリスクを回避できます。
読みにくいキャピタルゲインと違い、高い精度で読める収益としては、家賃収入が基礎となります。
このインカムゲインは変動要素が少なく、特にワンルームマンションは都心の立地条件の良い物はそもそもが稼働率も非常に高い為、長期に渡って収入として安定的に得られる事が予測できます。
しかし、変動要素は比較的少ないものの、建物が古くなった場合のその値下がり幅や、値下がりのスピード、それぞれの地域の賃料相場には売買価格同様に地域によって違いがあります。
今回はこの家賃収入の持つリスクについて細分化してご紹介していきます。
┃家賃収入のリスク
家賃収入の持つリスクは代表的なものをあげるとすれば、以下の通りとなります。
①築年数の経過による競合物件に対しての家賃の下落、または賃貸が付かないリスク
②駅からの徒歩距離や、物件の良し悪しによっての家賃の下落リスク
③事件事故による家賃の下落リスク
④家賃滞納などのリスク
一つずつ見ていきたいと思います。
①築年数の経過による競合物件に対しての家賃の下落、または賃貸が付かないリスク
まずは築年数による家賃の下落リスクです。
賃貸需要が高い地域ほど、この築年数の経過によっての賃料下落リスクは小さくなります。
立地条件の良い物件は、なかなか家賃が下がっていかないという事です。
私も沢山のお客様の所有物件の管理をお預かりしています。
既に15年程お持ちの物件でも、都心の物件は賃料が全く下がっていない物件がほとんどです。
しかし、全ての投資物件において家賃が下がらないわけではありません。
通常は、普通に考えても築年数に応じて下がっていくのが当たり前です。
┃私が所有している物件で具体例を紹介
具体的な例をあげますと、私が所有している不動産の中に、千葉県柏市の2LDKで60平米ほどのお部屋があります。
柏駅周辺では賃貸物件の賃料が都心に比べて下がりやすく、新築で購入していますが、購入当初は135,000円の賃料で入居者がついています。坪単価になおすと7,400円/坪となります。
現在は築12年経過して120,000円です。
ちなみに同じ広さで日本橋の物件であれば、中古でも築10年程で賃料坪単価は10,000円/坪くらいが相場となり、最低でも182,000円程の賃料が取れます。
新築なら20万円ほど(坪単価11,000円)は取れるでしょう。
千葉県の柏駅周辺とは相場が全く違いますね。
しかし、柏の物件はここからさらに築年数の経過により賃料が下がります。
中古の相場で築20年程経過している物件を調べると6,200円/坪程まで賃料が下がって募集されています。
という事は113,000円位まで、築20年の内に家賃が下がることになります。
現在築年数は12年経過していますが、途中で一度入居者が変わり、新築時の135,000円から15,000円下がり、今は120,000円まで下がっています。
今後相場通りで考えれば築30年までに大体108,000円程度まで賃料が下がることを想定しています。
パーセンテージで見るのであれば、30年間で20%下がるという事になります。
しかし、日本橋周辺の賃料相場は違います。
新築時に20万円の家賃が取れていたものが、中古の築30年経過した同様のマンションを見てみても9,500円程の賃料坪単価になります。
新築時と比べて13.5%しか下落していないことになります。
新築時のプレミア賃料はどの地域でも同様に中古に比べてほど一割ほど高く取れます。
例えば中古になって、賃料が落ち着いた状態から購入した場合で考えると、プレミア賃料ではない分家賃の下落リスクは小さくなります。
柏の物件でいうと現在の120,000円の新築時のプレミアがはずれた状態からスタートすることになります。
そうなると築30年になるにあたっては、築10年から運用をスタートした場合、約20年経過して108,000円まで下がる事になるので、運用開始から10%しか下落しなかったことになります。
これが日本橋の場合だと築30年で173,000円の賃料相場となりますので、築10年から購入して運用しても、築20年になる10年後までに4.5%程しか賃料は下落していないことになります。
図に表すと下記のようになります。
┃まとめ
この様に賃料の下落については、同じ立地で、同じ間取りの物件を調べ、築年数がさらに経過した物件の取引事例、成約事例を、時系列に沿って相場を事前に確認しておけばその下落率が予想できます。
最初から賃料がどれくらい下がっていくのかが見えていれば安心して投資できますよね。
賃料が下がるということは、築年数に応じて当たり前におきます。
しかし、その下落率は地域によって相場観が違うのです。
過去の取引データより相場を確認して投資すれば、想定と違うということはほとんど起きません。
物件ごとにデータをきちんと取って、相場を確認の上で投資すればいいわけですし、賃料が下がりやすい地域を避けて投資することもできるのです。