現在の金融機関情勢

2019/10/25

ニュース

いつの時代も住宅ローンはあり、不動産を購入する際はローンが組めます。

しかし、その融資条件は時代ごとに大きく内容が変わってしまいます。

 

投資物件を購入する際の融資は、自宅の住宅ローンに比べて更に経済状況に大きく左右され、その内容が刻一刻と変化しています。

 

不動産業者や金融機関にお勤めであれば、それをリアルタイムに肌で感じているかと思いますが、一般の方はまずその変化に気付かない事がほとんどだと思います。

 

当然自宅を購入する機会は、一生に一度かも知れませんし、融資を受ける機会がない分日常の中ではその変化を身をもって感じる事が少ないからです。

 

 
┃ローン条件が大きく変わった原因は??

 

ここ最近でいえばローンが組める条件が大きく変わってきている点があります。

 

その原因となっているのがスルガ銀行の不動産投資に関する融資の問題です。

 

大きくニュースでも繰り返し取り上げられたこの事件は、不動産投資の融資環境に大きく影響を与えています。

 

スルガ銀行の融資の問題は「シェアハウス」の投資に関する融資に端を発しています。

 

このシェアハウスですが、なぜ大きな問題になったのでしょうか。

 

実はこのシェアハウスの企画については、私の勤めている会社でも一度自社の商品として販売を検討したことがありました。

 

商品を企画している業者の方が説明に来られて、企画についての説明会に社員が参加して、販売するかどうかを検討したことがあったのです。

 

しかし、設定されている賃料の水準が明らかにワンルームマンションの相場よりも高く設定されており不自然だった事。
また、シェアハウスという完全にはプライベートが確立されない居住形態にそこまでの豊富な賃貸需要があるのか疑念があったことなどから弊社では取り扱いをしませんでした。

 

そこから数年した頃からその販売業者の内情がどうも危ないとの噂が流れ始め、最終的にニュースになって世間で騒がれ始めてしまいました。

 

業者が家賃を保証すると言っていたのですが、それを当てにして購入されたオーナー様方は、家賃を保証するはずの会社が倒産したことにより家賃収入が得られなくなってしまいました。

 

蓋を開けてみれば、結果入居率、稼働率が非常に悪く総戸数の半分も入居していない物件も多数存在していたようです。

 

結果、家賃保証を受けられなくなったオーナー様は、家賃収入が激減したことで返済が滞るなどの金融事故が相次ぎ、不良債権化してしまうことになったのです。

 

これはニッチなところの独占的なシェアを狙った、スルガ銀行とその販売業者の戦略が、市場のニーズとの食い違いにより破綻したケースです。

┃返済事故が続いた結果…

 

そもそも、シェアハウスというのは言ってみれば会社などの寮の様な形態の構造になっており、バス、トイレ、キッチンなどは居住者がそれぞれ共同で使用する形になっています。

 

登記上もマンションなどの共同住宅とは登記が異なり、寄宿舎となるのです。

 

これが融資に関していうと、ほとんどの金融機関は寄宿舎には融資をしてくれません。

 

共同住宅であるマンション投資はサラリーマンでも金融機関の取り扱いが多く、容易に融資が受けられますが、寄宿舎になると金融機関では融資が自由には受けられないのです。

 

その結果、スルガ銀行を通して購入する事が出来たとしても、売却の際には融資が受けられないので売ることができないのです。

 

こうなると買う事はできても、出口がない投資になってしまうということです。

 

金利が他の金融機関よりも高金利の設定になっていることも手伝って、返済事故の問題はどんどん拡大していきました。

 

問題が表面化したことを受けて、金融庁より指導が入り、スルガ銀行をはじめ不動産投資に関連する融資全体に警戒ムードが漂いはじめ、メガバンクを始めとする銀行系の融資は現在大幅に引き締めが起こっています。

 

地銀、信金ともに現在はそのほとんどがサラリーマン属性の方々に向けた不動産投資の融資を取りやめてしまっています。

 

比較的高属性の方でも、頭金が十分に入っていたとしても現在は取り扱ってくれません。

 

一時期はマイナス金利が導入されたことで、次々と様々な金融機関がこぞって不動産投資業界に融資条件を競って参入してきていたものが、この事件以降全く取り合わなくなってしまっています。

 

おそらくは警戒温度が下がるまである程度の時間を要するでしょう。

 

融資を再開する目途はいまのところ立っていない状況です。

┃信販系ローンは積極的に融資を継続

 

一方いつの時代も不動産投資に関して積極的に融資を行ってきた、いわゆる信販系のローンについてはスルガ銀行の問題を受けて融資を控えているメガバンク、地方銀行、信託銀行と違い現在も積極的に融資を継続して行っています。

 

私自身はこういった経験は今までにもありました。

 

リーマンショック等の大きな経済ショックがあると、それまで融資をしていた金融機関は一斉に潮が引くようにいなくなります。

 

よく「銀行は雨の時に傘を貸さない」といわれますが、その言葉の通りです。

 

市場に警戒ムードが少しでも漂えば、金融機関は決してリスクを冒しません。

 

日本には攻め気の金融機関というのは基本的に存在しません。

 

守ってなんぼなのです。

 

時代が変わる以上は、いつでも同じ条件で融資が組めるわけではありません。

 

今は融資が受けられても、少し時代が変われば皆さんも融資が受けられなく可能性は十分過ぎるほどあるのです。

 

金利が史上最低金利となっている現在の様な融資環境はそう長くは続かないのかも知れませんね。

現在の会社に入社後、設立初期より営業部を統括、本部長を務める。以降融資担当部長、流通事業部では仕入れ先開拓業務に従事、後に管理業務部等を歴任。

現在は自社セミナーを始め、様々な会社との協賛セミナーの講師を務めながら、常に世に発信する立場で不動産業に従事している。

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