実際に法人化することによって、特に税金面でのメリットを中心に個人で不動産を運用するよりも効率が良くなるポイントがあります。
しかし、法人化することが全ての人にとってメリットになる訳ではありません。
一通りメリットを理解しないと、それが当てはまらないパターンも理解できないと思いますので、ここではそのメリットをまず詳細に見ていきたいと思います。
┃税務上のメリット
まずは法人税率と個人の税率との違いによる税務上のメリットについてです。
法人税率は景気対策もあり優遇され、少しずつ税率が下げられ続けています。
2018年より実効税率が下がって平均的にみて29.74%となっています。
個人の所得税率は最高税率が45%、住民税が10%、合計すると55%が最高税率です。
不動産収入を得ると家賃収入が給与収入と合算される総合課税となり、給与収入に家賃収入が乗ってしまうため、申告の内容によっては収入が増え税率も上がってしまいます。
結果、法人を建てて家賃を受け取った方が圧倒的に税金が安く済む可能性があるという事です。
この受け取った家賃収入を、家族経営の会社であれば、給与収入の無い専業主婦の奥様に会社の仕事に携わってもらい、給与として支給したり、同様に親族に給与を出すこともできます。
また、会社の運用に必要な経費も使用することができます。
個人で家賃収入を受け取るよりも税金が安くなる事や、自分以外の他者への給与支払い、経費が使える事を考えると、結果的には収益率が高くなる可能性があるということです。
設立した資産管理会社の中で役員の退職金の積み立てを生命保険で作り、後々退職金として受け取ることもできます。
この場合は、会社の帳簿上拠出した資金を半分損金で経費計上出来ることがあります。
こうなると簿外で貯蓄を作っている事になり、税務上効率よく資金を貯めていけます。
退職金は控除があるので、受け取る際にも所得税と比べて税務上有利に働く可能性もありますし、現金の預金と違ってペイオフも適用がありませんので、資金が1000万円を超えても保証されます。
会社の中での経理上の処理としては、一旦雑収入として収入にはなりますが、同じ年度で退職金として引き当てるので利益にはなりません。
税務面や退職金、経費としての経理上の処理を考えれば法人化した方が、有利になるケースは沢山ありますが、比較的所得税率の高い方の方が是率の差ができるので効果は高くなりますし、成人した所得のないご親族がいる方の方が多方に給与が支払えるので効果は高くなります。
逆に給与所得が少なくて、所得税率がそもそも高くないのであれば逆効果になります。
┃売却時のメリット
個人で不動産を所有して、数年後売却する際は売却益に対して売却時に課税されます。
これが所有して5年(数えで)経過していない場合は短期譲渡で、所得税住民税合計で39%の税率で課税されます。
5年を超えてから売却された場合は長期譲渡となり20%に税率が落ちます。
これが法人の名義で取得された場合には所有年数に関わらず税率が一律30%となるので、短期で売却を想定しているのであれば法人名義で所有した方が税率が安く済みます。
一方長期で売却を想定しているのであれば、売却に対しては個人所有の方が税金が安く、メリットが出やすいという事になります。
┃法人化のデメリット
法人でローンを組む場合には、団体信用生命保険が付きません。
生命保険としての効果を期待することはできませんので、ご家族に資産を残すための保険効果を狙って投資をする方にはどちらかといえば不向きになります。
法人のローンは期間が短かったり、個人のローンよりも金利が高い場合もあります。
さらに頭金も比較的大きな資金を要求される可能性が高くなります。
法人を所有すると、赤字の会社になっていても、最低限の住民税の支払い義務があり、申告などの手続き税の為に税理士さんに支払う手数料も必要になります。
法人化した場合に有利になるかどうかは、給与を支払うメリットや本人の所得税率、経費、売却の想定などの運用方針が、法人化することによって運用効率がよくなるかどうかをよく考えてからでなければ必ずしもメリットになるとは言えないのです。
法人化すると顧問税理士が必要になったり、定期的な申告の業務がある為、担当の税理士には明確なメリットがあります。
税理士は法人化を勧めるかも知れませんが、必ずしもメリットがあるわけではない事を念頭によく説明をきいて判断される事をおすすめします。