不動産投資を検討される際に区分マンションに投資するのか、それとも一棟のマンション経営なのか、もしくはアパート経営か、この中で迷われている方もよく目にします。
どうせ買うなら大きな投資がしたい。
そう考える方も多いはずです。
最初からそんなに大きな投資は怖くてできないと言われる方も多いのですが、どうせやるならと考える方、キャッシュフローが出やすい一棟やアパート経営が効率がいいのではないかと考える方も多いのは事実です。
では何が一番いいのか?
当然それぞれに一長一短があります。
ここではそれぞれの特徴としてメリットデメリット、または実際に起こりえるリスクについて書いていこうと思います。
┃一棟ものの投資は甘くない!
まずは一棟マンションからですが、
一棟マンションの場合成功している方は大きな資産を形成していて、自身の資産形成の成り立ちを本に書いていたり、セミナー等で講演されている方もいらっしゃいます。
当然毎年家賃が1,000万円入ってくるとなれば仕事からも解放されるでしょうし、そんな生活に憧れるでしょう。
しかし、一棟物の投資はそんなに甘くありません。
まず、今公演をしていたり、本を出版するほどに資産を大きく形成している人たちは投資を今から10年以上前のタイミングで始めた方が多く、融資の環境が現在よりも遥かにゆるくて裏技的な融資が自由に組めた時期に大きな資産を買い付けている方がほとんどです。
もしも直近でそれだけの大きな金額の融資を受けるのであれば、現在は相当な金額の自己資金がない限り、融資は受けられません。
過去には一棟の融資が、サラリーマンでも比較的自由に組めた時期がありました。
頭金もいらず、さらに諸費用すら価格の内で処理してくれるので、基本的に手持ち資金がくなても投資ができた時代があったのです。
融資の上限に関しても現在より圧倒的に条件が緩かったので、大きく資産を伸ばすチャンスがありました。
不動産の価格そのものも現在よりは安く、不動産投資が今ほどメジャーではなかったことも要因としてはあるかもしれませんが、利回りは当時の方が取れていました。
金利自体は現在よりも高かったのですが、それでもキャッシュフローが月々出る事もあって積極的に買い付けている方も多かったのです。
しかし、一棟ものは基本的には物件ごとに状況が全く違います。
同じ築20年の物件であっても、保存状態や入居率、リフォームの状況、滞納率など、大きく状態に違いがあることが多いのです。
┃オーナーはひとりだけ。。コスト維持もひとりで負担
一棟物にはそもそもオーナーが一人しかいません。
土地、建物、設備すべてがオーナー1人のものです。
マンションには共有部というものがあります。
エントランス、水道管、排水管、廊下、エレベーター、ベランダ、自転車置き場、ごみ置き場、外装や屋上などです。
これらを入居者の方々が共同で使用しています。
このすべてにメンテナンスが必要になるのです。
鉄部の塗装、屋上の防水工事、エレベーターの非常用バッテリーの交換や外装の大規模修繕などの大きなコストが維持のためにかかるのです。
これらのコストは全てオーナー1人の負担となります。
オーナーが自分の資産だからときちんと手間とコストをかけてメンテナンスしている場合と、お金のかかることを先送りにしていて物件の状況が悪い状態の物件も存在します。
悪いものだと、物件の状況が悪くてお金がかかりそうなので、売ってしまえと売りに出しているケースすら往々にしてあり得るのです。
お客様の中にも実際に物件を購入してすぐさま外装の工事で1,000万円以上の見積もりが来て工事代金を負担しきれないケースも出ています。大規模修繕工事であればこの金額ではききません。
鉄部の塗装、屋上の防水工事も数百万円単位です。
ある程度のキャッシュフローが出ている位では場合によっては大きな赤字になってしまいます。
この設備に関してのコスト感を全く知らずに投資するのであれば、状況が悪くなった時に資金ショートしてしまいます。
┃一棟物の失敗事例
私が今までに聞いた実例をいくつかあげますと、
・社宅として半分以上のお部屋を大きな会社が借りてくれているので安心と勧められたが、一年ほどでその会社が移転してしまい、逆に半分以上が一気に空室になったことでキャッシュフローが転落、大きな赤字を抱えたまま現在も空室状況が大きくは改善できずにいる。
・海沿いのマンションを購入したが、一階に事務所がはいっており、マンションの壁面についているその会社の看板が塩害により看板の根元が腐食して落下してしまい、下に停めてあった車に衝突して大きな損害賠償を請求されたうえ、看板等の工事費が大きく損失につながった。
・「現在は空室が3割だが、家賃を保証するから大丈夫」と言われ購入したが、すぐにその会社が倒産し、家賃が入ってこない状態となり大きく持ち出すはめになった。
・最初はよかったが、ファミリータイプのマンションで退室のあった部屋の状態が悪く、その度に大きなリフォームをしなければ次の募集がかけられず、キャッシュフローが出るはずがトータルでは赤字、これから先の大規模修繕や工事費用を考えると資金が賄えるかがわからなくなってきている。
この様にここに挙げている実例を見るだけでも、場合によっては大きなリスクが潜んでいる可能性があることはおわかり頂けるかと思います。
┃売却も難しい…
一方で状況のいい物件や、立地の面でもうまく回っている物件も当然存在します。
ただ、素人の方にはその物件の状況を正確に把握するのはなかなか難しいのです。
今後の事を考えるのであれば、どういったタイミングでどれくらいの維持費がかかるのかをきちんと想定しコストもきちんと用意できなければ、将来にわたって十分な利益を確保するのは難しくなるということです。
なおかつ、古くなってその物件を建て替えるのは入居者がいる状態ではなかなか成立しません。
売却をしようにも減価償却が終わった、もしくは終わりかけの建物は税制面で考えると購入するメリットが薄いため、ほとんどの場合に売却そのものが難しくなるのです。
更に減価償却が終わりかけるとほとんどの金融機関は融資をしてくれず、売却する際に相手方は融資が使えない事になるので、より売却はより困難になってしまいます。
こうなると時間が経てば経つほど問題が大きくなる可能性があるのです。
入居率が落ち、建物のメンテナンスコストは逆に上がっていく以上、時間が経つにつれ、大きなお荷物物件となってしまうケースも少なくありません。
状況の良い物件を探すにはそれ相応の予備知識が必要になるので、営業マンに勧められるままに購入を急ぐのは考え物です。
┃まとめ
家賃収入によって資産を形成する不動産投資は投資金額にあたる物件の価格が大きくなると、基本的にメリットも大きくなります。
例えば家賃収入で毎月のローンや管理コストの支払いができた場合、その収支が続けば完済された暁には億単位の不動産を自身の資産とすることができるので、一棟物は金額が大きい分自身のサラリーだけでは到底形成できないであろう資産を持つことができる可能性があり、魅力的に見えます。
しかし、相反するリスクもコスト面を考えると大きくなりますので、中古の一棟物の場合は特によくその物件の状態を確認し、将来の維持コストをきちんと把握して検討する必要があります。