不動産を購入する際はほとんどの方々が融資を使います。
この不動産融資については時代ごとに条件が全く異なります。
はたしてマイナス金利で有利だといわれる今は、本当に融資を組むタイミングとして適正なのでしょうか。
不動産投資の融資条件がどのように変化してきたか、お話してみます。
┃バブル時代の融資状況
一旦バブル当時に遡ります。
当時は国の政策金利が6%台をつけていたこともあり、預金金利、貸付金利共に現在よりも遥かに高金利でした。
この貸付金利においては投資不動産の購入にあたっての融資金利が6%~8%程の時期がありました。
例えば金利7%で5,000万円を借り入れ30年で返済すると1億1,975万円支払うことになります。
金利だけで6,975万円。利息割合は58%となり、半分以上が金利の支払いです。
家賃収入に換算すると一体何年分の家賃収入に匹敵するのでしょうか。
ちなみに現行の金利は1.65%とすると、総支払は6,342万円です。
金利が1,342万円、利息割合は21%となります。
いかに今金利が安いかがわかると思います。
このバブル期の頃からJACCSという信販系の会社は投資用不動産に融資をし続けています。
┃リーマンショックの影響による融資状況
リーマンショック前投資不動産の融資に関しては、色んな企業が融資に参加していました。
ジャックス、オリックスはじめ、その他にも沢山の金融機関の選択肢があり、外資の証券会社が次々に参入してきて、メリルリンチ証券、モルガンスタンレー、ゴールドマンサックス等、名のある証券会社が次々に、不動産投資用資金の貸付専門の会社を立ち上げ積極的に融資を行っていました。
借入金利は和製の融資機関よりも若干金利が高く、4%台~5%台程の融資もありましたが、融資規定が緩かったので、様々な背景の方が幅広く融資を受けることが出来ました。
購入者(オーナー)の属性背景でいえば、年収300万円台でも融資がご紹介できた時代です。(今は年収500万円からが金融機関の基本的な基準です)
しかし、リーマンショックが起きた途端に、こういった外資の融資機関は総じて潮が引くように一瞬で撤退していきました。
景気が急激に悪くなるにつれ、どんどん融資機関の選択肢がなくなり、融資条件はあっという間に厳しく引き締められていきました。
年収の規定もそれぞれの金融機関で一気に引き上げられ、年収800万円以上でなければ相談もできないという様な状況まで引き締めが続きました。
当時は3%台の金利も当たり前でしたが、融資機関の選択肢がないので、投資物件を購入したい方はこの条件で融資を組む以外に選択肢がなかったのです。
景気が落ち込むにつれ、不動産も価格として買いやすくなっていましたので、購入を希望する方もいたのですが、融資が受けられずに断念される方も多かったのが当時の状況です。
リーマンショックにより、再度不景気によって融資条件が厳しくなった時点で、大量の在庫の出口を失い、都内の不動産業者は実に200社以上が在庫の処分にあえいで倒産していきました。
ここからしばらくの間は、金融機関も警戒温度が高くなり、融資を受けるのは非常にハードルが高くなっていたのです。
┃マイナス金利の今
その後、リーマンショックの影響から世界経済に大きな影響を受け、長い期間デフレの状況が続いた為、世界各国でもそれぞれの先進国が積極的に量的緩和を推し進めていく中で、日本も本格的にテコ入れが始まります。
その中で、阿部総裁率いる政府から日銀含め国の金融政策として、量的緩和の方向性の様々な金融政策が取られていきます。
日銀による金融派生商品の買取や、金利の引き下げ、年金基金の運用先の見直し、こういった政策のうち日本で取られたことのない政策で、初のマイナス金利導入が決定されたのです。
このマイナス金利の導入により、住宅ローンを含めた融資金利は史上最低金利を記録し、住宅ローン、投資不動産の融資も金利が現在は極限まで下がっています。
マイナス金利導入当初こそすぐには大きく条件は変わっていませんでしたが、徐々に金融機関同士の間で融資条件や金利のダンピング合戦、市場の獲得合戦がはじまりました。
互いに融資の条件を競って見直しはじめ、シェアを獲得するために、金利を引き下げたり、優遇金利をつけたり、キャンペーンを打ち出したりと融資条件がどんどん好転していきます。
この流れは今も続いており、信販系の融資機関によっては去年から35年が最長だった融資期間を45年と延ばしたり、完済年齢の条件を80歳から85歳に引き上げたりしています。
金利が下がる、また融資期間が長く取れると月々の返済が下がる為、家賃から返済する投資不動産は収支が好転し、持ちやすくなります。
当然買いやすくなったことで、購入希望者は倍増しています。
信販系の融資は緩和の姿勢を現在も継続していますが、地方銀行やメガバンクについては、スルガ銀行のシェアハウス問題から金融庁の指導が厳しくなり、不動産投資の融資をいつの時代も続けてきた信販系の会社に比べてあきらかに警戒感を高めており、現在は投資不動産の融資から撤退してしまっている金融機関も続々と出てきています。
日本の金融機関は基本的に保守的ですから、右に習えでこれを自社のビジネスチャンスとは捉えません。
金融庁に突っ込まれる可能性のある無駄なリスクは、避けて通るのが定石です。
少しでもそのリスクがあるのであれば、融資をやめてしまいます。
┃まとめ
この様に、融資の条件は刻一刻と常に変化しています。
私は様々な融資条件下でも常に不動産をご紹介し続けてきた者としていいますが、
融資の条件が良い時期は長い時間の中で見ればほんの一瞬です。
どんなにいい条件があっても、いつかは終わります。
永続的にその条件が続くことはまずあり得ません。
経済も10年スパンで見れば、悪い事が一つも起きていない10年はまずありません。
必ずといっていいほど、何かしらの事件が起きています。
もし今経済に悪いニュースが流れれば、あっという間に今の融資条件はなくなります。
金利が高い時期に買えば、同じものを購入しても余計な金利を払う事になり、数百万円単位で総支払額が変化します。
投資物件で例えるなら、金利が1%違うだけで5年分、6年分の家賃収入に匹敵するほどの収益をロスすることと同じだけのインパクトがあります。
皆さんからは、今この融資条件がどれほどの好機なのかがわかり辛いと思います。
不動産業に従事、または金融機関にお勤めの方以外はあまりピンときていないというのが本当のところではないでしょうか。
10年前のマンションは、今も見た目はほとんど変わりません。
価格もさほど大きくは変化していないでしょう。
せいぜい5年前と比べると、200万円~300万円高くなったかも?
その程度の変化として捉えている方が多いと思います。
しかし、長い間不動産や、住宅ローンを扱っている方からすれば、信じられないほどの好条件が整っていると考えてまず間違いありません。
支払う金利、融資の対象条件、年数、年齢、頭金の比率、どれを取っても私の知っている長い歴史のある不動産投資の融資条件の中でも最優遇されています。
さらにいえば、世界の貸付金利の水準から見ても世界一金利は安くなっているのです。
この融資条件はいつまでも続くわけではありません。
いずれ終わります。それもおそらくはそう先のお話ではないはずです。
この機をチャンスとみるか、そうでないかは皆さんの判断次第なのです。