地上権とは?賃借権、地役権の違いをわかりやすく解説

2018/11/16

不動産投資

不動産投資をやっていると、登記簿謄本で「地上権」という言葉を見かけることがあります。これは借主の持つ、土地に対する権利の一種ですが、一般的な土地の貸し借りからイメージされる権利よりもはるかに強いものです。一般的な権利である「貸借権」と同じようなものと誤解してはいけません。
そこで今回は、地上権や貸借権、地役権についてご説明します。堅苦しい法律の説明ではありますが、不動産投資家として理解するべき内容です。ぜひ、基本的な部分だけでも頭に入れていただければと思います。

「地上権の基礎知識」

地上権に関する基本事項をまとめます。民法における地上権の規定、そして地上権がどういった性質の権利であるのか理解しましょう。

地上権とは

地上権(ちじょうけん)は、民法265条に規定された権利です。それによると、「他人の土地において工作物または竹木を所有するため、その土地を使用する権利」と書かれています。ここでいう工作物とは建物や道路、トンネルや地下街など地上と地下の施設全般を指し、竹木とは樹木や竹林を指しています。

一般的に、建物を建設するために他人の土地を使用する権利を借地権と呼び、借地借家法の適用を受けます。地上権は借地権の一種なのですが、「借りる」という単語から受ける印象よりも土地に対して強い支配力を持ちます。たとえば、一般的には地代を支払って使用する場合が多いのは一般的な貸借と同じなのですが、その支払う額は法律や各種規則に定められていません。極端に言えば、地代を払わないケースがあっても問題がないのです。

地上権の存続期間は事前に設定されることが多いのですが、設定されない場合もあります。この場合、地上権はいつでも放棄できます。ただし、地代支払い義務がある場合は、1年前までに予告するか1年分の地代を支払わなければいけません。また、地上権を持つ者が権利を放棄しない場合は、当事者の請求に基づいて裁判所が20年から50年の間で定めます。

法律で地上権の存続期間について、特に制限があるわけではありません。したがって、存続期間を永久と定めることも理論上は可能です。そうは言っても、建物所有を目的とする場合は最短年数30年と借地借家法第3条で決まっています。仮に当事者同士の契約で20年と定めていても30年は地上権が有効ですし、一方で40年と定めたときはその40年が有効期間となります。

地上権には登記義務があるため、地主は登記簿に「地上権設定」と記載する必要があります。地下や地上の一部に地上権を設定することもでき、これを「区分地上権」と呼びます。送電線や地下鉄のように、他人の土地の空中や地下の一定区画だけを利用したいときに区分地上権の設定を求めることがあります。

地上権の取得者ができること

地上権を取得した人は地上権者と呼ばれます。地上権者は工作物や竹木を所有し、地主の承諾なしに第三者へ譲渡・売買したり建替したりすることが可能です。お金を借りるときに土地や建物を担保とする抵当権もあります。地上権を売却することも可能です。また、所有者に対して、登記の請求もできます。

このように物を支配する権利を物権と呼び、貸した人(債権者)が借りた人(債務者)を介して目的物を支配する債権とは区別されています。地上権のような物権は、借りた人も地主と同じように行使できることになります。

物権の典型が所有権ではありますが、地上権も物権であるため所有権と同じくらい強力な支配権を行使できるわけです。地上権が侵害された場合は、侵害者に対して訴訟を起こすなどして支配を回復することができます。

「地上権と賃借権、地役権の違い」

地上権の説明の際に、借地権や物権、債権といった権利についても言及しました。権利の種類が多くて混乱してしまいますので、整理のためにさらに貸借権や地役権についても触れてその違いをご説明します。

賃借権とは

貸借権(土地貸借権)とは、貸借契約を結んだ際に取得できる借主側の権利です。契約の範囲で土地や工作物を使用し、代わりに賃料を支払う義務があります。「土地を借りる・貸す」と聞いた場合に、一般的にイメージされるのは貸借権のようなものでしょう。

民法上では債権に当たります。物を直接的に支配する物権とは異なり、債権者が債務者に行為を請求する権利です。あくまで人に対する権利であり、物に対しては債権を介して間接的にしか支配できません。

したがって、借主は貸主の承諾なく土地や工作物を譲渡・売買できません。債権は物権より弱い権利であり、物権である所有権を有する貸主には勝てないのが原則です。ただし、借り手が落ち度もないのに強制的に追い出されるような不利益を被らないよう、実際には借地借家法を始めとした法律・ルールによって借主の権利も保護されています。

地上権と賃借権の違い

地上権も貸借権も、借地権の一種です。つまり、自己使用のために他人の土地を借りる権利であるのは同じです。借地権における物権側が地上権、債権側が貸借権と整理するとよいでしょう。土地所有者にとって地上権は不利であるため、現在流通している借地権のほとんどは貸借権であり、地上権がある場合は特別に記載のあるケースが多いです。だからこそ、登記簿に地上権設定と記載することになります。

地上権と貸借権の違いをまとめると、以下の通りです。

 借地権
 地上権貸借権
権利の種類物権債権
登記義務ありなし ※登記自体は可能
譲渡・売買時の地主の承諾不要必要
抵当権権利自体に設定可能

権利自体には設定不可
※建物にのみ設定可能

存続期間自由に設定可能
※建物所有が目的なら最短30年
20年以下
※借地借家法適用なら最短30年
地代ルールなし
※設定することが多いが無償も可能
かかる

このように、地上権には登記義務があるのに対し、貸借権の場合はありません。地上権があるなら地主に対して登記を請求できますが、貸借権の場合は地主の承諾を得る必要があります。

土地の譲渡や売買、転貸、建物のリフォームなどの際も、地上権者は自由に進められるのに対して貸借権者は地主の承諾なしには進められません。地上権自体を抵当権として設定できるのに対し、貸借権の場合は建物にだけ設定可能です。

地上権の存続期間は、当事者の合意に基づいて自由に設定できます。建物の所有を目的とした地上権の場合は、最短で30年です。貸借権の法定存続期間は20年以下(民法規定)とされていますが、借地借家法の適用があるのであれば地上権と同様に最短30年となります。

以上のように、同じ借主であっても地上権を有するケースと貸借権を有するケースとでは、できることの範囲と自由度が大きく異なっています。地主にとっては不利な面が多いため、地上権はあまり利用されていません。

地役権とは

地役権も、地上権や貸借権と同じように「他人の土地を利用できる権利」です。地上権と同じく物権の一つであり、物に対する強力な支配権を行使できます。

地役権は民法280条に規定されており、「自分の土地を使用するために他人の土地を利用できる権利」です。たとえば、所有する土地へ出入りするために他人の土地の通行を許可してもらう、というのが地役権の典型です。

地役権と地上権の違い

地役権と地上権の違いは、他人の土地を利用する目的です。

地上権は「他人の土地の工作物または竹木を所有すること」であるのに対し、地役権の目的は「自分の土地を使用すること」です。地上権は、他人の土地だけで完結する行為に対して設定されます。一方で、地役権は自分の土地(権利を設定する土地以外の土地)であることが前提です。

「不動産を運営するなら権利に関する基本的な法的知識を学ぼう」

地上権の説明を中心に、地上権・貸借権・地役権の違いについて触れました。また物権や債権の違い、そして借地権についても説明したことで、いかに不動産投資に法律や権利関係が絡んでいるか理解できたのではないでしょうか。

こうした権利についての理解が不足するために、意識しないまま自分に不利な契約を結んでしまう可能性もあります。理解不足の自覚があるなら専門家を頼るなどし、法律や権利への配慮を怠らないように注意しましょう。

 

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