┃修繕積立金とは?
マンションやアパート経営の場合共有部と呼ばれる居住者全員で使われる部分があります。
エントランス、廊下、非常階段、エレベーター、ごみ捨て場、自転車置き場、植栽、ベランダ等がそれにあたります。
この共有部については賃貸で入居している入居者が直接費用を負担して建物を直したりすることはありません。
外装のタイルのはがれ、オートロックの故障、こういったマンション全体の共有部の故障、修理、交換などは、一棟物のオーナーの場合は全てオーナー負担となります。
当然のことながら運用上エレベーターの交換や、外装、屋上の防水工事等、巨額の修繕費の負担が出る事もあり、数千万円の工事費が必要になることもあります。
昔はマンションを購入して居住している場合に大きな工事が必要になると、それぞれのオーナーに費用を都度負担して頂いて工事を行っていました。
しかし、工事費が大きな金額になると徴収する金額も当然大きくなってしまいます。
そうなると場合によりますが、資金面で苦しい方はこの費用が負担できずに資金が捻出できず、工事費用が十分に集められないので、共有部の工事が思うように進まなくなってしまいます。
これを防ぐために作られたのが修繕積立金制度です。
将来の大きなメンテナンスの工事の資金を前もってそれぞれのお部屋のオーナーより修繕積立金という名目で資金を徴収し、管理組合の方で資金を管理して貯金していきます。
将来はこの修繕積立金を取り崩して大きな修繕工事の代金を負担していきます。
┃一棟ものは全て自己負担…
一棟のオーナーの場合はこの大きな工事を全て自身の資金でカバーしていくので、よほど資金が手元にない限り運用に支障が出る可能性があります。
事故にあたるものであれば火災保険が適用になることもありますが、基本的に大規模修繕工事は壊れたから行うものではなく、壊れる前に定期的にメンテナンスを行うものです。
外装であれば雨漏り、配管であれば水漏れなど、実際の事故が起きてからでは大きな被害を被る可能性があるため、事前に壊れないように定期のメンテナンスをするのが大規模修繕工事です。
保険は適用になりません。
区分所有のマンションはこの修繕費用を基本的には全て修繕積立金から負担していきますので、突然大きな資金の捻出を迫られる可能性はほとんどありません。
そういった意味では運用上のリスクは一棟物と比べるとはるかに低くなります。
自身の部屋の中の設備、配管、内装の修繕は少なくとも負担になりますが、それ以上の負担は原則的に月々支払う修繕積立金以外はありません。
┃修繕積立金の法則
この修繕積立金ですが、いくつか法則があります。
新築時には修繕積立金は全く積み立てられておりません。
新築当初はマンションは壊れるところがありませんので、出費が出る可能性は低いのですが、なにかの突発的な事故や故障に対応する必要もあります。
そのために新築の場合は修繕積立基金と言って、最初のオーナーさんから比較的大きな金額の捻出が必要となります。
新築当初のイレギュラーなケースの修繕に備えて費用を集めておく必要があるということです。
しかし、新築当初から築10年くらいの間まではほとんど修繕箇所がありません。
必要な修繕費も少額でいいということになるので、新築当初は修繕積立金は最低限の金額しか徴収しません。
築年数に応じて必要になる修繕費を、経時的に修繕積立金の徴収金額を調整し、値上げをすることで将来必要になる修繕積立金を賄えるようにしていきます。
大規模修繕工事は比較的小さい物件でも1,000万円以上のコストがかかる事が一般的です。
最近では12年に一度か14年に一度の頻度で大規模修繕工事を入れているマンションが多くなっています。
ちなみに海外に行くとこういった修繕積立金制度はありません。
中国などは日本と似たタイプのマンションが多くありますが、同じ築30年の物件だとしても、日本の物件とは段違いに状態が悪く、ボロボロになっているものも多く存在します。
そういった意味ではメンテナンスの計画をして、物件の状態の維持に努める修繕積立金制度は資産価値を落とさない為にも非常に有効な手段といえます。
マンションの運用の際は定期的にこういった大きな工事が入るということを念頭に、修繕積立金が値上げになることを収益の計算に入れて、投資を検討する必要があります。
┃修繕積立金の注意点
修繕積立金については何点か注意点もあります。
修繕積立金はマンションごとに状況が全く違います。
昔と比べると内容が悪いということも少なくなりましたが、修繕の計画はマンションの管理会社が主導して計画し、管理組合の総会などで提案相談の上決定していきます。
マンションの修繕費の収入源は修繕積立金以外にも自転車置き場、駐車場、自動販売機や屋上の看板の貸し出し等があります。
このような収益源を多く持っているマンションの場合は、稼働率にもよりますが、修繕積立金が安く済むケースもあります。
実際の工事は計画よりも遅くなって実施されていたり、工事費が競合の会社の中で相見積もりを取って折衝することで安く収まることもあります。
こういった場合当初の資金計画とは違う状態になっていることもあるので、重要事項調査報告書を取って現在の状況を知る必要があります。
状況が悪い場合は、修繕積立金の滞納が大きな金額になり回収が難しくなっていたり、資金の補填の為に管理組合で大きな借り入れをしていることもあります。
借り入れは必ずしも悪いということではありませんが、借り入れがない方が健全ですし、あまりにも大きい金額であれば当然資金がうまく回っていないということもあり得ます。
急激な修繕積立金の変化を起こすよりは、管理組合金融機関から借り入れを起こす方が、修繕積立金の値上げを抑える効果があるため、金利の安い現在は借り入れをうまく活用している管理組合も増えてきています。
修繕積立金については国土交通省のガイドラインとして徴収の平均の金額や工事に必要になる金額の考え方が公開されています。
現在はこの修繕に関して、あまりずさんな状態になっているマンションは少なくなりましたが、大事な資産ですから、購入するマンションの状態や、計画、工事履歴と集金状況をよく確認して、その物件の修繕がきちんと計画通りに行える見込みがあるのか、確かめたうえで購入を検討する必要があります。
国土交通省ガイドライン
https://www.mlit.go.jp/common/001080837.pdf