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不動産投資では、安定した家賃収入を得るために「出口戦略」が重要となります。出口戦略をしっかり描いていれば、賃貸経営で不測の事態が起きても、しっかりとした対応ができるようになるのです。
今回は、不動産投資を成功に導くための出口戦略について解説します。出口戦略の重要性や売却のタイミング、失敗しないためのポイントを紹介するので、ぜひ最後まで読んで参考にしてみてください。
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目次
不動産投資では、利回りなどの収益性だけでなく「出口戦略」を考えることも重要です。
出口戦略という言葉はもともと軍事用語で、いかに損失を抑えて撤退するのかという戦略を指します。不動産投資における出口戦略とは、投下した資金を減らさないために、投資物件を最終的にどのように処理するのか考えることです。
不動産投資の出口戦略に失敗してしまうと、家賃収入で得た利益がすべて消えるほどの損失が発生するかもしれません。投資物件を購入するときから出口戦略を意識し、収益で得た資金をできるだけ増やせるような経営計画を立てましょう。
不動産投資にはかならず出口があります。出口を迎えた段階で不動産を適切に売却できれば、不動産投資は成功で終わったといえるでしょう。
不動産投資で得られる利益には大きく2種類あり、ひとつはインカムゲイン、もうひとつはキャピタルゲインです。インカムゲインとは、物件を運用し続けることで得られる家賃収入で、キャピタルゲインは物件を売却して得られる利益です。出口戦略はキャピタルゲインに含まれます。
賃貸経営がうまくいき、順調にインカムゲインを得られていたとしても、出口戦略に失敗してしまうと、積み重ねたインカムゲインが吹き飛ぶかもしれません。その反面、賃貸経営に失敗してマイナスが続いていたとしても、売却によって大きなキャピタルゲインを得られれば、トータルをプラスで終えることができます。
このように、出口戦略の成否は、不動産投資の行方を左右する大きなものであると理解しておくことが重要です。
出口戦略で成功するためには、出口のパターンを把握しましょう。ここからは、不動産投資の出口戦略を4つ紹介します。
1つ目のパターンは、収益物件のまま売却する方法です。物件に入居者がいる状態で売却すれば、引き渡しの直前まで家賃を得られるというメリットがあります。また、購入後の入居者募集の手間が省けるので、買主にとってもメリットが得られるでしょう。
収益物件のまま高値で売却するポイントは以下の2つです。
● 入居率を上げる
● 高い家賃で入居してもらう
この2つを意識して賃貸経営を行えば、収益物件として重要な高い利回りが確保され、収益物件のまま高値で売却できます。
なお、収益物件のまま売却する方法がおすすめなのは、資産価値として物件価格を算出するより、利回りの高さから算出したほうが高値で売れる一棟マンションや一棟アパートです。
収益物件のままではなく投資物件を更地にして売却する方法があります。一棟アパートや戸建物件で有効な方法で、他の区分所有者がいる区分マンションではできません。
たとえば、建物が古いため高い家賃が設定できない、建物に傾きがあるなど、建物に問題がある場合に更地にして売却します。ただ、建物に問題がある場合は修繕費で多額の費用がかかるので、高値では売却できません。
また、建物を解体して更地にしたり、入居者に退去してもらったりする際に費用がかかるため、それらも踏まえた資金計画が必要です。
築年数が古く空室率が高い物件や、水漏れ、シロアリ被害などで建物の主要な部分にダメージが蓄積されている物件に有効な出口戦略です。
賃借人が退去したタイミングで、買主が自己居住用として利用できるよう売却する方法もあります。区分マンションや戸建物件で活用できる手段です。
とくに、ファミリー物件は需要が高い傾向にあるため、収益物件より自己居住用のほうが高値で売れる可能性があります。オーナーチェンジ物件を比較的安価で購入できた場合、空室になったタイミングで売却すれば大きなキャピタルゲインを狙えるかもしれません。
ただし、どの物件も空室になったタイミングでうまく売却できるとは限りません。流動性が高い駅近物件や、賃借人が直接購入したいと言ってきた場合に有効な方法です。
賃貸経営がうまくいかず、売却してもマイナスになってしまう場合は、オーナー自身の居住用物件として利用する方法があります。現在住んでいるところから引っ越せば、家賃が軽くなる効果が期待できるでしょう。
しかし、自己居住用として利用すると減価償却費が計上できないため、節税効果がなくなってしまいます。また、投資用ローンから住宅ローンへの切り替えは簡単ではないため、高い金利のまま住まなくてはなりません。
自己所有する方法はデメリットが多いため、最終手段として考えたほうがいいでしょう。
投資物件を売却するタイミングは、ただ単に「高く売れるから」という理由だけで考えてはいけません。ここからは、出口戦略において重要な不動産を売却するタイミングについて解説します。
不動産市場の動向により、不動産価値が明らかに高くなっているときは売却するタイミングです。不動産全体の価格が上がっていれば、所有している不動産が高く売れる可能性が高いため、大きなキャピタルゲインを狙うことができます。
不動産市場の動向を知る方法として、公的機関や調査会社が公表している資料を調べることがあげられます。たとえば、国土交通省の「令和5年9月・令和5年第3四半期分 不動産価格指数」では、不動産価格指数が、住宅は前月比 0.6%上昇、商業用は前期比 1.6%上昇という結果が出ています。
(出典:国土交通省「不動産価格指数(令和5年9月・令和5年第3四半期分)を公表」/https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/content/001715748.pdf)
このような調査結果や住宅情報を常にチェックすることで、不動産市場の動向を把握できるでしょう。
不動産を売却した際にかかる譲渡所得税は、不動産を所有していた期間により以下のように税率が変わります。
【短期譲渡】
期間:売却した年の1月1日時点で取得から5年以内
税率:39.63%(所得税30%、住民税9%、復興特別所得税0.63%)
【長期譲渡】
期間:売却した年の1月1日時点で取得から5年以上
税率:20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)
短期譲渡は長期譲渡に比べ倍近くの税金がかかるため、長期譲渡に切り替わったときが不動産を売却するタイミングです。
ただし、5年以上や5年以内の基準は「売却した日」ではなく、「売却した年の1月1日時点」という点に注意しましょう。たとえば、2018年9月に購入した物件を2023年10月に売却した場合、実質的には5年以上経っています。しかし、売却した年の1月1日時点では5年が経っていないので、短期譲渡になってしまうのです。
不動産投資の利益は税金も含めて考えなければいけません。所有期間にも気を配り、少しでも大きな利益を確保しましょう。
減価償却とは、物件の購入費用を耐用年数に応じて分割し、費用計算する仕組みのことです。減価償却期間が終了したときも売却するタイミングです。
不動産投資では、高額な物件価格を減価償却費として計上すると、帳簿上で赤字になる可能性があります。帳簿上で赤字になると、給与所得や事業所得などの他の所得と損益通算ができるので、税金対策として有効です。
また、支払いは物件購入時に済んでいるため、実際の現金は手元に残っています。減価償却をうまく利用すれば、不動産投資のキャッシュフローをよくできるでしょう。
しかし、減価償却期間が終わると経費計上できる金額が減り、賃貸経営の利益が増えてしまいます。利益が大きくなることで税金が増え、手元に残る現金が減るため、物件を保有するメリットが少なくなるのです。
減価償却による恩恵を最大限に受け終わった段階で、売却に踏み切ることも検討してみましょう。
デッドクロスとは、ローンの元金返済額が減価償却費を上回った状態を指します。ローンの元金部分は経費計上できないため、減価償却費を上回ると帳簿上では黒字でも、手元の現金が減ってしまいます。
デッドクロスが発生するのは、減価償却期間が終わるタイミングか、ローン返済において元金の割合が増えてきたタイミングです。デッドクロスに入ると、キャッシュフローは変わらないのに帳簿上で大幅な黒字になり、所得税と住民税が高くなります。不動産経営の圧迫を避けるためにも、デッドクロスになる可能性が出てきたときが不動産を売却するタイミングといえます。
デッドクロスのタイミングを把握するためには、金融機関から発行される返済表を確認しましょう。返済表には元金部分の金額が記載されており、その金額と減価償却費を比較すると、デッドクロスのタイミングを知ることができます。
不動産投資は、物件ごと、または目的ごとに出口戦略を立てることで成功につながります。
物件ごとに出口戦略を考える場合、一棟マンションや一棟アパートは、収益物件として売却することが一般的です。さらに、建物の築年数や規模によっては、更地としての売却を検討していいかもしれません。
区分マンションの場合は、短期での売却を視野に入れながら運用するといいでしょう。区分マンションは一棟アパートや一棟マンションと比較して低予算で購入できますが、キャッシュフローは少なめです。そのため、家賃収入を得ながら、空室になった時点で居住用物件として売却するなどの戦略がおすすめです。
戸建物件は需要が高い割に供給が少ないので、さまざまな出口戦略を立てることができます。入居者の多くは定着率が高いファミリー層のため、投資家からも人気で、比較的売却がしやすいのです。また、戸建物件は一棟アパートや一棟マンションに比べて解体費用が安くつくため、更地としての売却もおすすめです。新築一戸建てを建てたい人や、駐車場を経営したい人をターゲットにしてみましょう。
物件の購入時に自己資金を多めに入れれば、出口戦略の自由度が上がります。購入時にフルローンやオーバーローンを利用すると、残債が物件価格より高くなることがあります。この場合、物件価格だけでは残債を返済できないので、手元に資金がなければ売却できません。
一方、自己資金を入れて物件を購入した場合は、売却価格が残債を上回っていることが多く、自由なタイミングで売却できます。タイミングを自由に図れると、もし入居者が物件を購入したいと申し出てきた場合などに、柔軟に対応できるでしょう。
臨機応変な出口戦略を立てるためにも、自己資金を多く入れて物件を購入することが重要です。
出口戦略を立てる上で、将来の人口動向や需要を予測することは欠かせないポイントです。購入物件のエリアは将来的に人口が増えるのか、需要が高まるのかなどを確認するといいでしょう。
また、再開発事業を調べて賃貸需要を予測する方法もあります。たとえば、駅周辺で大きな再開発事業が計画され、新たな商業施設やマンション建設が予定される場合は、賃貸需要が高まることが期待されます。
しかし、個人で人口の動向や需要を調べるには限界があるため、あらかじめ不動産投資会社のコンサルタントと接点を持ったり、セミナーに参加したりして情報収集の窓口を広げておきましょう。
購入した物件を収益物件として売却する場合、資産価値を維持しておく必要があります。資産価値を維持するためには、日頃の管理が重要です。管理が行き届いていない物件は、空室リスクや修繕リスクが高まり、高値で売却できません。
管理の質を高めるためには、信頼できる管理会社に管理を委託しましょう。信頼できる管理会社かどうかは、インターネットで口コミを見たり、実際に管理している物件を見に行ったりして確認できます。
融資難易度が低いと融資がおりやすくなり、出口戦略で有利に立てるため、購入時に融資難易度が低い物件を選びましょう。
中には、違法建築や既存不適格という、現在の建築基準法を満たしていない物件が存在します。これらの物件は、金融機関の審査が厳しくなり購入できる人が少なくなります。一方、建築基準法を満たした物件は融資難易度が低い特徴があります。購入のハードルを下げるためにも、建築基準法を満たした物件を選ぶことが重要です。
また、物件価格に対する土地の価値が高い物件を選ぶといいでしょう。建物の価値は築年数とともに年々下がっていくため、金融機関の審査が厳しくなります。金融機関の中には「土地価格の何割まで融資する」という基準が設けられているケースもあります。
「価格が安い」「利回りが高い」からといって、どの物件を選んでもいいわけではありません。出口戦略を意識して、バランスが取れた物件を選びましょう。
今回は不動産投資における出口戦略について解説しました。不動産投資の出口戦略とは、最終的に不動産をどのように処理するのかを考えることです。不動産を売却するのは、市場相場が上昇したタイミングや、減価償却期間が終わるタイミングを見計らうといいでしょう。
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J.P.Returns株式会社
執行役員 コンサルティング3部 本部長
J.P.RETURNS執行役員。
J.P.RETURNSに入社後、設立初期より営業部を統括、本部長を務める。以降融資担当部長、流通事業部では仕入れ先開拓業務に従事、後に管理業務部等を歴任。数百戸の投資用区分マンションを販売、自身でも6件の不動産を所有、運用している。現在は自社セミナーを始め、様々な会社との協賛セミナーの講師を務めながら、常に世に発信する立場で不動産業に従事している。
【書籍】
日本で最も利回りの低い不動産を持て!
マンション投資2.0
【ブログ】
室田雄飛のモグモグ不動産投資ブログ
元不動産営業の専業WEBライター。
不動産営業を12年間経験し店長、営業部長として、売買仲介、賃貸仲介、新築戸建販売、賃貸管理、売却査定等、あらゆる業務に精通。
個人ブログにて不動産営業への転職のお手伝い、不動産営業のノウハウ、不動産投資のハウツーなどを発信。
不動産業界経験者にしかわからないことを発信することで「実情がわかりにくい不動産業界をもっと身近に感じてもらいたい」をモットーに執筆活動を展開中。
【保有資格】
宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士