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土地を取引する際には、適正価格を意識する必要があります。購入時に想定を上回る価格だったり、逆に売却時に想定を下回る値段だったりする場合に、客観的に適正価格がいくらなのか取引相手に提示できると交渉もスムーズにいくかもしれません。
土地の適正価格を知るために参考となるのが、公示地価と基準地価です。今回は両者の共通点と違いについて説明するとともに、その調べ方までお伝えします。
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基準地価との違いの前に、公示地価がどういった土地価格を指しているのか、どうやって決めるのか、ご説明します。特に、何のために公示地価は使われているのか、誰がいつ決めているのかを理解しましょう。
公示地価・基準地価・路線価はいずれも公的機関が公表している、日本各地の「土地の値段」です。
買主側の土地に対するニーズの高さ、あるいは売主側に早期の現金化ニーズが高いなど、売買時のさまざまな事情によって取引価格は左右されます。そのため、政府は「平均的」な土地を標準地として、その正常な地価を公表することで土地取引の際の指標を定めるようにしています。
公示地価は、指標としての役割を持つ地価です。
公示地価は「公示価格(地価公示価格)」とも呼ばれることがあります。「土地の一物四価」という4種類の価格(実勢価格(時価)・公示地価・相続税評価額(路線価)・固定資産税評価額)のうちの1つで、国土交通省土地鑑定委員会が定めた全国の標準地の標準価格です。要するに、土地取引を行う際の標準的な価格が公示地価であると捉えればよいでしょう。
ほかにも、公共事業用地取得価格算定の基準、国土利用計画法による土地の価格審査の基準などとしても用いられます。
標準地の1平方メートルあたりの価格を公示地価としており、これが特別な事情がない限りにおいて適正と見込まれる価格(正常価格)となります。必ずしも土地の取引価格を公示地価に合わせる必要はないのですが、重要な指標としてしばしば参考にされます。
毎年1月1日時点の更地価格を調査し、3月中旬頃に公示されます。2020年は、3月19日に発表されました。三大都市圏(東京圏・大阪圏・名古屋圏)で住宅地・商業地ともに上昇しただけでなく、全国平均でもともに上昇するなど、全国的に地価の緩やかな回復傾向が明らかとなりました。
公示地価は、土地取引だけの参考価格ではありません。土地に対する相続税や贈与税を決める際の目安や、固定資産税評価額の目安としても用いられます。
「基準地価」は各都道府県が主体となって毎年7月1日時点の評価が、9月下旬頃に公示されます。
基準地価の評価方法は基本的に公示地価とほぼ同じですが、1地点につき不動産鑑定士1名以上による鑑定評価をもとに決めるという点と、都市計画区域以外も含まれる点が異なります。
「路線価」は国税庁が主体となって毎年1月1日時点の評価が、7月1日に公示されます。
公示地価や売買実例価格、不動産鑑定士等による鑑定評価額などをもとに決められますが、公示地価の約8割が評価額の目安とされており、2つに分けられています。
一般的に「路線価」と呼ばれているのが「相続税路線価」で、相続税や贈与税を算出する際に用いられる評価額です。一方で、土地の固定資産税評価額を決める基準となる路線価を「固定資産税路線価」と呼びます。
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公示地価の調査地点である標準地は、やはり国土交通省の土地鑑定委員会によって選定されています。2020年は、約26,000地点が標準地となりました。
近隣地域の環境や地形、駅までの距離や電気・ガス・上下水道の整備状況などを加味して、平均的と思われる場所が選ばれます。公示地価は、周辺にある類似した土地の価格の目安です。そのため、いびつな形や極端な大きさの土地、あるいはあまりに便利すぎたり不便すぎたりする土地は標準地から除外されます。
標準地は全国各地から選定されていますが、それでも日本の隅々にまで及ぶものではありません。標準地は、あくまで「公示区域」から選定されるようになっています。
公示区域とは、地価が公示される区域のことです。土地取引が一定以上見込まれる区域や都市計画区域(都道府県が指定)を公示区域とすることが、都市計画法によって定められています。必ずしも市町村の行政区域とは一致しておらず、複数の市町村を含むケースも少なくありません。
公示地価とよく似ているのが、基準地価です。発表タイミングのみならず使われ方や評価対象となる区域などに違いがあるため、この違いを踏まえて2つの地価を参考にする必要があります。
公示地価・基準地価・路線価の違いをまとめるとこのようになります。
公示地価 | 基準地価 | 路線価 | |
調査主体 | 国土交通省土地鑑定委員会 | 都道府県 | 国税庁 |
用途 | 土地取引を行う際の標準的な価格 公共事業用地取得価格算定の基準 国土利用計画法による土地の価格審査の基準 |
土地取引を行う際の標準的な価格 | 路線価(相続税路線価):相続税や贈与税を算出する際に用いられる評価額
固定資産税路線価:土地の固定資産税評価額を決める基準となる路線価 |
価格の決め方 | 1地点につき不動産鑑定士2名以上による鑑定評価をもとに決める | 1地点につき不動産鑑定士1名以上による鑑定評価をもとに決める | 路線価:公示価格の8割が目安
固定資産税路線価:公示価格の7割が目安 |
対象 | 都市計画区域内(不動産の取引が行われると予想される土地) | 都市計画区域外も含まれる | 全国の標準宅地数約34万地点 |
評価時期 | 毎年1月1日時点 | 毎年7月1日時点 | 毎年1月1日時点 |
公表時期 | 毎年3月中旬 | 毎年9月下旬 | 毎年7月1日 |
基準地価とは、毎年7月1日を基準日とした基準地の土地価格です。発表主体は各都道府県で、毎年9月中旬から下旬頃にかけて公示されます。たとえば東京都の2020年の基準地価公示は、9月30日に行われました。
基準地価は、正式には「基準地標準地価」と呼ばれます。また「都道府県調査地価」「基準地価格」などと呼ばれることもあります。基準地は全国20,000地点以上におよび、土地の最高値や最安値ではなく水準地価を示しています。公示地価と同じように、一般に行われる土地取引の指標です。
基準地は、都道府県知事によって決められます。一定の地域内で利用状況や環境などが通常と認められる画地を基準地と定め、1人以上の不動産鑑定士の鑑定評価を参考にして基準地価を定めます。基準地は、公示地価における標準地と共通することもあります。
路線価とは相続税や贈与税などの税金を計算する際の基準になる土地価格のことです。
国税庁が公表している路線価は「相続税路線価」、市町村が固定資産税を計算する際に使用する路線価は「固定資産税路線価」と呼ばれます。
一般的には、どちらも公示地価と連動しており、相続税路線価は公示地価の8割程度、固定資産税路線価は公示地価の7割程度となっています。
公示地価も基準地価も、国土交通省の「土地総合情報システム」で調べられます。このページでは、公示地価や基準地価だけでなく、不動産取引価格に関する調査結果が公開されています。都道府県や市区町村の公示地価や基準地価が調査年ごとに閲覧できますので、土地価格の推移を見るのに大変参考になります。地価が上昇傾向にあるのか、下降傾向にあるのか一目瞭然です。
ほかには、各都道府県の財務局のホームページなどを見ると、基準地調査の判定結果や調査の概要などがPDFで掲載されています。
参考:地価公示・地価調査・取引価格情報 | 土地総合情報システム | 国土交通省
路線価は以下のURLから調べることができます。
参考:財産評価基準書|国税庁
路線価が定められていない地域もあり、その場合は地域ごとに決められた「評価倍率」を固定資産評価額にかけて計算します。「評価倍率」は上記URLから閲覧できます。
また、固定資産税路線価については各自治体で確認してみましょう。
東京都の固定資産税路線価は以下で公開されています。
参考:東京都主税局<路線価公開(23区)>
利用者にとって最も大きな違いは、調査時期です。公示地価は1月1日時点、基準地価は7月1日時点の価格であるため、基準地価はしばしば公示地価を補完するものとして活用されます。特定地域の地価動向を見るのにも有用です。
多くの場合で標準地と基準地が異なるため、結果として基準地価が公示区域外の土地を評価しているケースもあります。そのため、公示区域外の土地の地価を知りたい場合に、基準地価は重要な指標となります。
地価の評価基準も若干異なっています。公示地価は、地価公示法に基づいて2名以上の不動産鑑定士によって鑑定評価されたものです。それに対して基準地価は、国土計画利用法に基づいて1名以上の不動産鑑定士によって鑑定評価されたものです。鑑定者の数が多いから公示地価の方が信頼できるというわけではありませんが、両者を比較する際には評価基準の違いを考慮する必要があります。
公示地価や基準地価は、保有する土地や購入したい土地の評価価格を算出する際の参考として使用できます。
土地取引の参考にできるだけでなく、2件目以降の物件を買い進める際に金融機関が融資できる状態なのか、担保余力を見る際にも参考になります。
国土交通省のホームページからすぐ調べられますから、ぜひ近隣の標準地・基準地の価格は頭に入れておきましょう。
J.P.Returns株式会社
執行役員 コンサルティング3部 本部長
J.P.RETURNS執行役員。
J.P.RETURNSに入社後、設立初期より営業部を統括、本部長を務める。以降融資担当部長、流通事業部では仕入れ先開拓業務に従事、後に管理業務部等を歴任。数百戸の投資用区分マンションを販売、自身でも6件の不動産を所有、運用している。現在は自社セミナーを始め、様々な会社との協賛セミナーの講師を務めながら、常に世に発信する立場で不動産業に従事している。
【書籍】
日本で最も利回りの低い不動産を持て!
マンション投資2.0
【ブログ】
室田雄飛のモグモグ不動産投資ブログ
大学在学中に家庭教師のアルバイトをきっかけにデイトレーダーへ転身。24歳で資産運用法人を設立する。25歳から大手投資用マンションディベロッパーと業務提携後、およそ6年間にわたり資産運用アドバイザーとして活躍。その後、大手不動産仕入れ会社で販売統括責任者として従来の投資用物件の流通システムを革新するプロジェクトを立ち上げる。国内最大規模の投資イベント「資産運用EXPO」で登壇実績があり、同業他社からも多くの見学者が立ち見の列を作った。2020年にJ.P.RETURNSに参画。オンラインでの商談やWEBセミナーを導入し、コロナ禍でも年間300件以上の顧客相談を担当している。
【保有資格】
宅地建物取引士、ファイナンシャル・プランナー(AFP)