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目次
不動産売却時にはさまざまな税金がかかります。税額の種類や計算方法、節税につながる制度を知っておけば、誤った手続きや税金の払い過ぎを防げるでしょう。不動産売却でかかる税金や節税のポイントについて詳しく解説します。
(出典) photo-ac.com
不動産売却時の税金を算出するためには、譲渡所得を計算しなければなりません。譲渡所得の基礎知識や計算方法について解説します。
所得の種類は、給与所得や事業所得など10種類に分けられています。不動産を売却した際に得られる利益は『譲渡所得』です。不動産以外にも、株式・貴金属・機械器具・ゴルフ会員権を売却した場合は、その利益は譲渡所得とみなされます。
譲渡所得にかかる税金は所得税と住民税です。不動産の譲渡による所得は『分離課税制度』が採用されているため、他の所得と合算せずに税額を計算しなければなりません。
不動産に関連した所得としては、譲渡所得以外に『不動産所得』もあります。不動産所得は、主に賃貸物件からの家賃収入が該当する所得です。不動産の売却益が不動産所得にはならない点に注意しましょう。
不動産の譲渡所得は、売却額がそのまま所得額になるわけではありません。『売却額-取得費-譲渡費用』で計算した金額が譲渡所得となります。
取得費に該当する主な費用は、『不動産の購入代金』『購入時に発生した税金』『設備費』『リフォーム代』『仲介手数料』です。建物を売却する場合は、建物が経年劣化することを考慮し、減価償却費相当額も差し引く必要があります。
不動産の購入時期が昔過ぎて購入代金が分からない場合は、売却額の5%を取得費とすることが可能です。実際に計算した取得費が5%を下回ったケースでも、取得費を5%として所得額を算出できます。
不動産の譲渡所得を計算する際は、売却額から譲渡費用も差し引く必要があります。譲渡費用とは、不動産の売却に直接かかった費用のことです。
『売却時に支払った仲介手数料』『売主が負担した印紙税』『土地を売るために建物を取り壊した際の費用』『借家人に支払った立退料』などが、譲渡費用に該当します。
不動産の所有中に発生した修繕費や固定資産税は、不動産を売るために直接かかった費用ではないため、譲渡費用にはなりません。
(出典) photo-ac.com
不動産の売却時に得られる譲渡所得には、所得税・住民税・復興特別所得税が課税されます。それぞれの具体的な内容や計算式について解説します。
所得税とは個人の所得に課される国税です。1年間の課税所得を算出し、控除を適用した後に税率をかけて税額を計算します。譲渡所得にかかる所得税の計算式は『譲渡所得×税率』です。
所得税の課税方式は、総合課税と分離課税の2種類に分かれています。給与所得・不動産所得・事業所得は、合算して税額を求める総合課税の対象です。一方、分離課税で税額を求める譲渡所得は、他の所得と合算せずに単独で税額を算出します。
所得税の納税は、確定申告の期間中に行わなければなりません。確定申告や納税の期限は、不動産を売却した年の翌年の3月15日です。
不動産の譲渡所得は、『短期譲渡所得』と『長期譲渡所得』に分けられます。不動産を売却した年の1月1日までの所有期間が5年以下なら短期譲渡所得、5年を超える場合は長期譲渡所得です。
短期譲渡所得の所得税の計算式は『譲渡所得×30%』、長期譲渡所得の場合は『譲渡所得×15%』となります。短期譲渡所得の税率を高く設定しているのが特徴です。
短期譲渡のルールはバブル期に制定されました。かつては短期と長期の区別はなかったのですが、バブル期に投機目的の土地転売が横行したため、転売を防ぐために短期譲渡のルールが定められたのです。バブル期の終焉から長らく経った現在も、制度は変更されていません。
譲渡所得には所得税だけでなく住民税もかかります。所得税の確定申告を行えば、同時に住民税も申告されたことになるため、住民税のみの手続きは必要ありません。
住民税は住んでいる自治体に納める地方税です。市町村民税と道府県民税に分かれています。一般的には年4回に分けて納税しますが、4期分を一括で納付することも可能です。
住民税の税額は、所得税と同様に『譲渡所得×税率』で計算します。短期譲渡所得で住民税を算出する際の税率は9%、長期譲渡所得の場合は5%です。
2037年12月31日までの25年間は、所得税が徴収される際、所得税と併せて『復興特別所得税』も課されます。復興特別所得税とは、2011年に発生した東日本大震災からの復興に活用される税金です。
不動産の譲渡所得にかかる復興特別所得税は、『譲渡所得×2.1%』の計算式で算出します。短期と長期で税率の違いはありません。
なお、東日本大震災の復興増税策は住民税も対象です。2013年度から2023年度までの10年間、住民税の年額に1000円追加して徴収されています。2012年からの2年間は、法人税にも税額に10%をかけた金額が復興特別税として課されていました。
(出典) photo-ac.com
不動産を売却して利益が出た場合は、いくつかの特例の適用を受けることが可能です。節税につながる代表的な制度を紹介します。
マイホームを売った場合に一定の要件を満たせば、譲渡所得から最高3000万円まで控除できる特例を適用できます。不動産の所有期間の長さは関係ありません。
譲渡所得が3000万円以下なら、税金はかからないことになります。この特例を利用するためには、確定申告書に一定の書類を添えて提出しなければなりません。
不動産を売却した年の前年または前々年に、別の不動産で3000万円控除の特例の適用を受けている場合、この制度は利用不可です。特例を複数回利用したいなら、前回の利用時から2年以上経過していることが条件となります。
マイホームを売った年の1月1日時点で所有期間が10年を超えている場合、一定の要件を満たせば軽減税率の特例を適用できます。長期譲渡所得の税額を、より低い税率で計算することが可能です。
適用される所得税の税額は、長期譲渡所得の金額により異なります。6000万円以下なら税額は『長期譲渡所得×10%』、6000万円を超える場合は『(長期譲渡所得-6000万円)×15%+600万円』です。
軽減税率の特例は3000万円控除の特例と併用できます。長期譲渡所得から3000万円を控除してもまだ所得が残っている場合、軽減税率の特例を利用すれば節税のメリットを受けることが可能です。軽減税率の特例を受けるためには、確定申告を行わなければなりません。
(出典) photo-ac.com
不動産売却で利益を得たら、確定申告を行って税金を納めなければなりません。確定申告の方法や譲渡損失がある場合の特例について解説します。
確定申告を行う際は、『確定申告書B』『分離課税用申告書』『譲渡所得内訳書』の準備が必要です。いずれも税務署または税務署のホームページで入手できます。
仲介手数料・印紙税の領収書や売買契約書のコピーも必要です。特例の適用を受ける場合は、それぞれの必要書類も用意しなければなりません。
書類の準備や作成が済んだら、税務署に提出すれば確定申告は完了です。所得税の納税方法には、現金・振替・e-Taxの3種類があります。
確定申告の手続きは税理士に依頼することも可能です。ただし、費用の相場が3万円以上となっているため、できるだけ自分で申告しましょう。
売却年の1月1日時点で所有期間が5年超のマイホームを売却し、譲渡損失が出た場合、一定の要件を満たすことで他の所得と相殺できます。
さらに、相殺しきれなかった分がある場合は、翌年以降3年以内の所得から繰り越して控除することが可能です。ただし、繰越控除をする年の合計所得金額は3000万円以下でなければなりません。
譲渡損失と他の所得との相殺を行うためには、確定申告が必要です。会社員なら給与所得と相殺すれば節税につながるため、譲渡所得がマイナスでも確定申告を行いましょう。
(出典) photo-ac.com
不動産売却時には、所得税や住民税以外に、印紙税と登録免許税も発生します。消費税がかかるケースも覚えておきましょう。
不動産を売却する際に締結する売買契約書には、印紙税がかかります。印紙税とは、売買契約書や建築請負契約書などの課税文書に対して課される国税です。
印紙税の税額は、課税文書の種類や記載金額に応じて決まります。例えば記載金額が1000万円超5000万円以下の場合、不動産売買契約書にかかる印紙税額は1万円です。
税額分の収入印紙を購入すれば、印紙税を納付したことになります。収入印紙は課税文書に貼付しなければなりません。印紙税は原則として売主と買主が半分ずつ負担します。
住宅ローンを利用して不動産を購入した場合は、ローン契約時に金融機関が不動産に抵当権を設定します。一方、ローン完済後は金融機関が抵当権を抹消してくれるわけではないため、自分で抹消しなければなりません。
抹消し忘れた抵当権が不動産売却時に残っている場合は、抵当権抹消登記の登録免許税が発生します。税額は『不動産の数×1000円』です。登記作業を司法書士に依頼するなら、司法書士への報酬も支払う必要があります。
なお、不動産売却時の売主が登記上の売主と異なっている場合は、氏名や住所の変更登記も必要です。この場合の登記費用も基本的に売主が負担します。
投資用の不動産を売却するケースでは、原則として消費税が課税されます。売却するのが個人の場合でも、課税事業者とみなされれば消費税の課税対象です。
ただし、前々年の課税売上高が1000万円以下なら、課税事業者とはならないため消費税の納税義務が免除されます。不動産投資を始めたばかりなら、売却時にも消費税はかからないでしょう。
建物と土地を同時に売る場合、消費税がかかるのは建物部分のみです。土地の売買は非課税取引と決められています。
不動産売却時に得た譲渡所得にかかる税金は、所得税・復興特別所得税・住民税です。不動産の所有期間により、税額を計算する際に用いる税率が異なります。
マイホームの売却時に一定の要件を満たせば、3000万円の特別控除や軽減税率の特例を利用することも可能です。税金の計算方法や税金を抑える方法を理解し、売却の手続きを進めましょう。
内容は確認して概ね問題ないかと思いますが、計算式などは見せ方を枠で囲うなどしてわかりやすいように出来れば良いなと思いました!
J.P.Returns株式会社
執行役員 コンサルティング3部 本部長
J.P.RETURNS執行役員。
J.P.RETURNSに入社後、設立初期より営業部を統括、本部長を務める。以降融資担当部長、流通事業部では仕入れ先開拓業務に従事、後に管理業務部等を歴任。数百戸の投資用区分マンションを販売、自身でも6件の不動産を所有、運用している。現在は自社セミナーを始め、様々な会社との協賛セミナーの講師を務めながら、常に世に発信する立場で不動産業に従事している。
【書籍】
日本で最も利回りの低い不動産を持て!
マンション投資2.0
【ブログ】
室田雄飛のモグモグ不動産投資ブログ
新卒で入社した大手投資用マンションディベロッパーで、歴代最高売上を記録。その後、財閥系不動産会社で、投資物件のみならず相続案件、法人の事業用物件、マイホームの購入や売却といった様々な案件を経験。 2018年にJ.P.RETURNSの新規事業部立ち上げに参画。また、セミナー講師として、延べ100回以上の登壇実績を持ち、年間300件以上の顧客相談を担当している。
【保有資格】
宅地建物取引士、ファイナンシャル・プランナー(AFP)