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不動産売却にあたっては、さまざまな手数料や税金が必要になります。売り手が支払う主な費用は、仲介手数料や譲渡所得税・住民税、印紙税、司法書士報酬などです。
不動産売却に関する手数料を仲介手数料・各種税金・司法書士報酬・その他手数料の4つに分類し、それぞれ詳しく解説します。
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目次
不動産売却にかかる税金や手数料を以下の表にまとめました。
内容やタイミング | 代表例 | |
1 | 決済時などに不動産会社に支払う手数料 | 仲介手数料 |
2 | 売却前後に発生する各種税金 | 譲渡所得税・住民税、印紙税、登録免許税 |
3 | 抵当権抹消時に支払う費用 | 司法書士報酬 |
4 | その他 | ハウスクリーニング代、引っ越し費用など |
本記事では、4つのパートに分けて不動産売却にかかる手数料や税金を解説していきます。
ここでは、上限額や計算方法、支払うタイミング、注意しなければならない点など、仲介手数料にまつわる基礎知識を確認しておきましょう。
宅地建物取引業法の第46条では、不動産売買に関する報酬について以下のように定めています。
・報酬の額は、国土交通大臣の定めるところによる(第1項)
・宅地建物取引業者は、前項の額をこえて報酬を受けてはならない(第2項)
「国土交通大臣の定め」は、国土交通省の告示から確認できます。2019年8月30日最終改正の告示に記載されている報酬額は、以下の通りです。
売買価格の区分 | 手数料率上限 |
200万円以下の部分 | 5.5% |
200万円超400万円以下の部分 | 4.4% |
400万円超の部分 | 3.3% |
つまり、不動産会社が仲介手数料として受け取れる報酬の上限は、上記の表の範囲です。
参考:国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」
売買価格1,000万円のケースを例にとり、仲介手数料の上限を計算してみましょう。
まず、1,000万円のうち200万円以下の部分(200万円)を計算します。
・200万円 × 5.5% = 11万円
続いて、1,000万円のうち200万円超400万円以下の部分(200万円)を計算します。
・200万円 × 4.4% = 8.8万円
次に、残りの400万円超の部分を計算します。今回は600万円(1,000万円 ー 200万円 ー 200万円)です。
・600万円 × 3.3% = 19.8万円
最後に、算出したそれぞれの金額を合計します。
・11万円 + 8.8万円 + 19.8万円 = 39.6万円
つまり、売買価格1,000万円の場合、仲介手数料(税込)上限は39.6万円です。
ちなみに、以下の速算式を用いれば、今回の計算のように売買価格が200万円超の場合でも、複数回にわたり計算する必要がありません。
売買価格の区分 | 手数料率上限 |
400万円超の場合 | 売却価格 × 3% + 6万円 + 消費税 |
200万超~400万円以下の場合 | 売却価格 × 4% + 2万円 + 消費税 |
200万円以下の場合 | 売却価格 × 5% + 消費税 |
速算式を用いた場合、売買価格1,000万円の仲介手数料上限は以下のように計算できます。
・1,000万円 × 3% + 6万円 + (1,000万円 × 3% + 6万円)× 10% = 39.6万円
不動産売却で仲介手数料を支払うタイミングは、不動産会社によって異なります。その中でも、契約時に仲介手数料の50%、物件の引き渡し時に50%と2回に分けて支払うことが一般的です。
不動産会社にいつ支払うのか、あらかじめ確認しておきましょう。また、不動産仲介手数料の値引き交渉を検討しているのであれば、媒介契約を結ぶ前がよいです。
仲介手数料は、安いに越したことがありません。しかし、極端に安い場合や仲介手数料無料がアピールされている場合には注意が必要です。
例えば、仲介手数料は無料であっても、別の項目で費用を請求される可能性があります。また、売り手からの仲介手数料を無料にする分、買い手から仲介手数料を取れるように不動産会社が「囲い込み」に走ることもあるでしょう。
囲い込みとは、別の不動産会社が買い手を紹介しても媒介契約を締結している不動産会社が断ることです。囲い込みにより、買い手候補者が狭められることで、最終的に希望価格で売却できないことがあります。
「仲介手数料が安い」という点だけでなく、ほかの部分にも注目して業者を選ぶことが大切です。仲介手数料値引き以外での業者の選び方として、以下3点が挙げられます。
1.ホームページなどで不動産会社の実績を比較する
2.担当者が信頼できそうか見極める
3.不動産があるエリアに詳しい不動産会社を選ぶ
まずは、不動産会社に直接相談してみるとよいでしょう。
仲介手数料には、法律や国土交通省の告示で上限が定められています。一方、手数料には下限がありません。
交渉次第で仲介手数料を値下げできる可能性もあります。値引き交渉する場合には、他の不動産会社の手数料を提示することがポイントです。
そのため、最初から一社に絞るのではなく、あらかじめ複数社に不動産売却の相談をしておくとよいでしょう。
各種税金の計算方法を説明した後に、節税するコツについて解説していきます。
譲渡所得とは、不動産や株式といった資産を譲渡することで生じる所得のことです。課税される譲渡所得金額は以下の式で計算できます。
・収入金額 ー( 取得費 + 譲渡費用)ー 特別控除額
取得費や譲渡費用の合計が収入金額を上回っていれば、譲渡所得税や住民税は課されません。
また、譲渡所得税率は、売却年の1月1日時点で所有期間が5年以下(短期譲渡所得)か、5年超(長期譲渡所得)かによって異なります。長期譲渡所得の場合は所得税率15%で住民税率は5%、短期譲渡所得の場合は所得税率が30%で住民税率は9%です。
なお、所得税の他に基準所得税額の2.1%の復興特別所得税が課されます(2037年まで)。
参考:
国税庁「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」
国税庁「土地や建物を売ったとき」
印紙税とは、契約書を交わす際に貼付する印紙代のことです。印紙税額は、文書の種類や契約金額によって異なります。
例えば、不動産売買契約書に記載された金額が3,000万円の場合、1万円分の印紙(2024年3月31日までの軽減措置)が必要です。
売主保管用書類と買主保管用書類を作成する場合、買主と売主でそれぞれ自分が保管する分の印紙を負担します。
登録免許税とは、登記・登録・特許・免許・許可などに課される税金のことです。不動産売買により所有権移転の登記をする際や抵当権抹消登記をする際にも、登録免許税が課されます。
所有権移転登記にかかる登録免許税は、原則買主負担です。一方、抵当権抹消登記にかかる登録免許税は一般的に売主が負担しなければなりません。
抵当権抹消時の登録免許税は、不動産1個につき1,000円分の印紙が必要です。抵当権抹消については、3で詳しく解説します。
参考:
国税庁「No.7190 登録免許税のあらまし」
国税庁「No.7191 登録免許税の税額表」
国税庁「抵当権の抹消登記に必要な書類と登録免許税」
譲渡所得が下がれば、譲渡所得税額や住民税額も下がります。算出式(収入金額 ー( 取得費 + 譲渡費用)ー 特別控除額)からわかるように、譲渡所得を下げる要因のひとつが、特別控除です。
例として、公共事業などのために土地建物を売った場合の5,000万円の特別控除の特例、マイホームを売った場合の3,000万円の特別控除の特例などがあります。売却前に、特別控除の特例に該当するものはないか確認するようにしましょう。
また、売買契約書を1通のみ作成し、残りをコピーで対応すれば、印紙税を節税できます。1通作成の場合、1通分の印紙税を買主と売主で等分して負担することが一般的です。
居住用物件であれば住宅ローン、不動産投資物件であれば不動産投資ローンの借入が残っている場合、売却前(時)に返済して抵当権抹消しなければなりません。抵当権抹消時には、登録免許税だけでなく司法書士報酬もかかります。
ここでは、抵当権抹消の概要や売却時に抵当権抹消が必要な理由を説明した後で、司法書士の報酬相場を解説します。
抵当権とは、不動産を購入するために金融機関から融資を受ける際に、設定される担保のことです。また、完済後に抵当権を抹消するために法務局に登記申請することを抵当権抹消(登記)と呼びます。
抵当権抹消にあたって、金融機関から受け取る以下の抹消書類が必要です。
・金融機関が発行する抵当権登記抹消に関する委任状
・金融機関の資格証明書(発行から3ヶ月以内)
・登記済証もしくは登記識別情報通知
なお、現在の所有者氏名と住所が登記されている所有権の登記名義人記録と一致しない場合、抵当権抹消前に住所・氏名の変更登記をおこなわなければなりません。
抵当権抹消がなされていなければ、登記上ローンが残っていることになります。ローンが残った状態の物件でも欲しいと思う買い手は少ないため、売却前の完済と抵当権抹消をしておかなければなりません。
ただし、売却時に受け取る代金を元手に既存ローンを完済するケースもあります。売却代金でローンを返済する場合、売却(決済)日と抵当権抹消登記日が同日です。
抵当権抹消手続きを司法書士に依頼する場合、報酬を支払わなければなりません。司法書士報酬は、各司法書士事務所によって異なります。
日本司法書士会連合会が、2018年1月に会員である司法書士に実施した報酬に関するアンケート(抵当権抹消登記)の結果が以下の通りです。
エリア | 報酬の平均値 |
北海道地区 | 15,532円 |
東北地区 | 13,863円 |
関東地区 | 15,613円 |
中部地区 | 16,638円 |
近畿地区 | 18,795円 |
中国地区 | 15,289円 |
四国地区 | 14,409円 |
九州地区 | 13,821円 |
抵当権抹消のための司法書士報酬として、1万〜2万円かかることを想定しておくとよいでしょう。
出典:日本司法書士会連合会「報酬アンケート結果(2018年(平成30年)1月実施)」
抵当権抹消登記自体は、司法書士でなくてもできる作業です。自分で抵当権抹消手続きを進めれば、かかる費用は登録免許税のみで司法書士報酬を節約できます。
ただし、売却時に得た収入でローンを返済してから抹消する場合、所有権移転登記も同日におこなわれることになります。これは複雑な作業となるため、抵当権抹消も司法書士に依頼することが一般的です。売却前に抵当権抹消できる状況の場合に限り、自分で抹消登記することも検討しましょう。
さらに、物件が戸建てである場合に別途費用がかかることもあります。各費用を紹介した後に、安く抑えるコツについても詳しく解説します。
キッチンやトイレ、浴室、洗面台といった水回りをハウスクリーニングしてきれいにしておけば、高額で売れやすくなる可能性が高まるでしょう。3LDKや4LDKの場合、戸建てで8万〜13万円、マンションで7万〜12万円がハウスクリーニング代の相場です。
また、窓ガラスが割れていたり、壁に穴があいていたりしている場合も、売りにくいでしょう。修理が必要な部分がある場合は、リフォームによる原状回復費用も想定しておかなければなりません。
土地や戸建てを売却する場合、隣地との境界を明確にするために売買時までに買主から測量を求められるケースがあります。測量には、数十万円単位の費用がかかることが一般的です。
また、築年数が古い戸建ての場合、解体して更地にした方が高く不動産を売却できることがあります。解体費用は構造によって異なりますが、100万〜300万円が目安です。鉄骨造に比べ、木造の方が短期間かつ低価格で解体できる傾向にあります。
住宅ローンや不動産投資ローンを返済中の場合、売却前(時)に一括返済しなければなりません。金融機関によって、一括返済時に数万円単位の手数料を求められることがあるため注意が必要です。
一方、フラット35のように毎年保険料(特約料)を支払う団体信用生命保険に入っている場合や、前払で保証料を支払っている場合、全額返済時に一定金額が返戻されることもあります。
居住用物件を売却する場合、引っ越し費用も負担しなければなりません。引っ越し費用は、単身か家族か、荷物は大きいか、同一市内間か都道府県をまたぐか、などの条件によってさまざまです。
引っ越し費用は一般的に、距離や時間に基づく基準運賃、料金、荷役・荷造り作業員費用や高速道路利用料などの実費、クーラー取り付けなどの付帯サービス料で構成されています。
家族で引っ越す場合、距離次第で10万円を超えることもあるため注意しましょう。
ハウスクリーニング代も引っ越し費用も、正式に依頼する前に各社に見積もりを出して比較することが節約するコツです。ただし、安くてもサービス内容がよくないと結果的に損するため、評判もあわせて確認しておきましょう。
また、引っ越しは時期を考慮することで費用を安く抑えられる可能性があります。時期を調整できそうであれば、3〜4月や月末といった繁忙期を避けての引っ越しがポイントです。
手付解除とは、売買契約時に買主から交付されていた手付金を返還し、手付金と同額を買主に支払うことにより、売主都合で契約を解除することです。ちなみに、買主都合で契約を解除する場合は、買主が交付済みの手付金を放棄します。
違約解除とは、契約違反をした場合にまず相手側から損害賠償請求され、依然として履行しない場合は契約解除されることです。契約違反による解除・違約金と表現されることもあります。
手付解除の場合も違約解除で契約解除に至っても、不動産会社への仲介手数料は発生する点に注意しましょう。
また、不動産投資では売却に関する費用だけでなく、利回りや税制面などさまざまな知識を蓄えていることが大切です。不動産投資セミナーに参加するなどして、さらに不動産知識を身につけていきましょう。
J.P.RETURNSでは、基礎知識から応用編まで充実したセミナープログラムを提供しています。個別の質疑応答・相談にも対応しているため、マンション投資が気になる方は気軽にお越しください。
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J.P.Returns株式会社
執行役員 コンサルティング3部 本部長
J.P.RETURNS執行役員。
J.P.RETURNSに入社後、設立初期より営業部を統括、本部長を務める。以降融資担当部長、流通事業部では仕入れ先開拓業務に従事、後に管理業務部等を歴任。数百戸の投資用区分マンションを販売、自身でも6件の不動産を所有、運用している。現在は自社セミナーを始め、様々な会社との協賛セミナーの講師を務めながら、常に世に発信する立場で不動産業に従事している。
【書籍】
日本で最も利回りの低い不動産を持て!
マンション投資2.0
【ブログ】
室田雄飛のモグモグ不動産投資ブログ
大学在学中に家庭教師のアルバイトをきっかけにデイトレーダーへ転身。24歳で資産運用法人を設立する。25歳から大手投資用マンションディベロッパーと業務提携後、およそ6年間にわたり資産運用アドバイザーとして活躍。その後、大手不動産仕入れ会社で販売統括責任者として従来の投資用物件の流通システムを革新するプロジェクトを立ち上げる。国内最大規模の投資イベント「資産運用EXPO」で登壇実績があり、同業他社からも多くの見学者が立ち見の列を作った。2020年にJ.P.RETURNSに参画。オンラインでの商談やWEBセミナーを導入し、コロナ禍でも年間300件以上の顧客相談を担当している。
【保有資格】
宅地建物取引士、ファイナンシャル・プランナー(AFP)