マンションの減価償却とは?計算方法や確定申告のポイントについてご紹介

公開日:2021/06/07 最終更新日:2022/11/17

税金対策
記事監修:室田雄飛

マンション購入に際して直面するのが、減価償却費の計算です。会社勤めをしている場合、経理担当でない限りは減価償却の実務を行うことが少ないため、戸惑う人も少なくありません。
しかし、減価償却の仕組みさえ頭に入れておけば、税務署への確定申告へ向けた帳簿づけがスムーズに進むだけでなく、効果的な節税対策にもつなげることができます。マンション購入の前に知っておきたい、減価償却の定義や減価償却費の計算方法について説明します。

マンションの減価償却費の計算方法?確定申告前に知っておきたい計算のポイント

そもそも減価償却とは何か?

そもそも減価償却とは何か?

 

マンション購入における減価償却費の計算方法について詳しく説明する前に、減価償却の定義について押さえておきましょう。

不動産投資はもちろん、その他事業を展開する際も資産形成の重要なポイントになります。減価償却の仕組みを使うことで、所得税などの納税額をある程度コントロールすることも可能です。

 

減価償却とは?

減価償却とは、事業の業務などに用いられる設備へ投資したときに、その取得にかかった費用を設備の使用可能期間にわたって、各年分の必要経費として按分、つまり振り分けるという会計上の手続きです。

たとえば、100万円の資産を10年間使用できると考えた場合、最初の年に100万円計上するのではなく、10年間にわたって10万円ずつ計上する、というのが減価償却の考え方です。

費用を振り分けられる資産の使用可能期間のことを、一般的に「耐用年数」と呼びます。耐用年数は法律によって定められており、設備ごとに大きく異なっています。

不動産投資に関連する各種設備の耐用年数については、後ほど細かく見ていきましょう。

【不動産投資】減価償却についての理解を深めると節税できる!

減価償却費は、あくまで会計上の経費であって実際にはお金が出ていくわけではありません。
先ほどの例で言うと、毎年10万円の減価償却費を計上したとしても、実際に10万円の支出があったわけではないのです。

そのため、事業展開において将来の減価償却費の金額を戦略的に考えておくことで、税額をコントロールできるようになります。
減価償却費を活用した節税を意識して投資すれば、手元に残るキャッシュフローを増やすことも可能です。

このように、減価償却費の仕組みを知ることは、事業の運営において極めて重要です。詳しい情報を知りたい場合は、国税庁のホームページを見たり直接問い合わせたりしてみましょう。

減価償却は不動産投資でも必要

・不動産投資における減価償却

減価償却の対象は、「品質が劣化して価値が下がるもの」となります。たとえば、車や建物、産業・商業用機器などが対象にあたります。

不動産・マンション投資の物件も、時間と共に価値が減るため、減価償却の対象になります。

減価償却が重要なのは、マンション経営を初めとした不動産投資でも変わりません。
減価償却費を活用して、所得の変化に応じて不動産の購入時期をずらしたり、不動産所得の赤字や売却損(譲渡所得の損)を給与所得など他の所得と合算する「損益通算」と呼ばれる仕組みを使ったりと、税金を減らす方法がいくつもあります。

収入から仲介手数料・管理費などの経費や各種控除を引いた金額に税率をかけ算することで課税額が算出されることを考えると、経費の一つである減価償却費は大きなポイントとなってきます。

減価償却の対象は、経年劣化によって価値の下がっていく資産です。

具体的には、建物やその付属設備、産業・商業用機器、車両運搬具などが対象資産として挙げられます。もちろん、不動産投資の物件も減価償却対象に含まれています。ただし、土地は劣化しないと考えられることから、減価償却できません。

マンションの耐用年数

マンションの耐用年数

 

建物の耐用年数は、用途や新築・中古の違いによって大きく異なります。また、区分所有する建物本体の費用だけでなく、諸費用や設備費も減価償却の対象に含まれるケースもあります。ここでは、マンションと減価償却の関係について一つひとつ見ていきます。

減価償却の対象の費用

・減価償却する額

マンションの費用は、純粋に建物のみの価格で、土地の費用は入りません。なぜなら、価値が下がるものではないため、減価償却の対象外になります。
また、不動産会社への手数料などマンションを直接購入するのにかかった費用も含まれます。

マンションでも、減価償却の対象は建物部分だけであり、劣化しない土地は含まれません。したがって、建物の取得価格を調べる必要があります。

分かりやすいのは、マンション購入時の売買契約書に建物の価格が明記されている場合です。この場合は、記載されている建物の価格を、そのまま取得価格として減価償却費の計算に用います。

もし売買契約書を見ても建物の価格が明記されていない場合は、固定資産税評価額を用いるのが一般的です。

固定資産税評価額を基に、不動産価格から建物の取得価格を求めるわけです。具体的には、以下のような計算式となります。

 

<建物の取得価格の計算式>

不動産の売買価格×(建物の固定資産税評価額÷不動産の固定資産税評価額)×20%

 

(例)マンションの売買価格:5,000万円、固定資産税評価額:4,000万円、建物の固定資産税評価額が3,000万円の場合

建物の取得価格は3,750万円(5,000万円×3,000万円÷4,000万円)となります。

 

耐用年数は中古、新築、建物の用途で変わる

・法律上の耐用年数

毎年の減価償却費を計算するうえでは、建物や設備の使用可能期間である耐用年数がカギになってきます。耐用年数が長いほど、毎年の減価償却費は少なくなりますし、短ければ多くなります。

耐用年数は、構造・用途や新築・中古で変わってきます。また、建物本体(躯体)と建物設備でも耐用年数が異なるので、分けて考える必要があります。それぞれ、表にしてまとめます。

 

・構造・用途ごとの耐用年数

まず、新築の建物の構造・用途別に、耐用年数を見てみましょう。これらの耐用年数は税法に定められており、「法定耐用年数」と呼ばれます。

【木骨モルタル造】

用途 耐用年数
事務所 22年
住宅 20年
飲食店 19年
旅館などの宿泊施設 15年
店舗 20年
病院 15年
工場・倉庫 14年

 

【木造・合成樹脂造】

用途 耐用年数
事務所 24年
住宅 22年
飲食店 20年
旅館などの宿泊施設 17年
店舗 22年
病院 17年
工場・倉庫 15年

【金属造】

用途 骨格材の肉厚 耐用年数
事務所 4mm超 38年
3mm超4mm以下 30年
3mm以下 22年
住宅 4mm超 34年
3mm超4mm以下 27年
3mm以下 19年
旅館などの宿泊施設 4mm超 31年
3mm超4mm以下 25年
3mm以下 19年
事務所 4mm超 29年
3mm超4mm以下 24年
3mm以下 17年
店舗 4mm超 34年
3mm超4mm以下 27年
3mm以下 19年
病院 4mm超 29年
3mm超4mm以下 24年
3mm以下 17年
工場・倉庫 4mm超 31年
3mm超4mm以下 24年
3mm以下 17年

 

【れんが・石・ブロック造】

用途 耐用年数
事務所 41年
住宅 38年
飲食店 38年
旅館などの宿泊施設 36年
店舗 38年
病院 36年
工場・倉庫 34年

 

【鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造・鉄筋コンクリート(RC)造】

用途 耐用年数
事務所 50年
住宅 47年
飲食店 41年
※木造内装部分が30%超の場合は34年
旅館などの宿泊施設 39年
※木造内装部分が30%超の場合は31年
店舗 39年
病院 39年
工場・倉庫 34年

 

・マンションの場合

マンションの場合は、当然「住宅」の欄を参考にします。アパートなら木造も珍しくありませんが、マンションであればそのほとんどが鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造・鉄筋コンクリート(RC)造のはずです。その場合は、耐用年数47年で計算することになります。

中古マンションの場合は、築年数を耐用年数から差し引く必要があります。ただし、単純に耐用年数-築年数とするわけではありません。築年数が耐用年数を経過している場合とそうでない場合で、以下のような計算式となります。

【築年数が耐用年数を経過している場合】

<耐用年数の計算式>

耐用年数=法定耐用年数×20%

 

【築年数が耐用年数を経過していない場合】

<耐用年数の計算式>

耐用年数=法定耐用年数-築年数×80%

 

(例)築年数20年の鉄筋コンクリート造のマンションの場合

法定耐用年数は47年であり、築年数より大きいので耐用年数は31年(47-20×80%)となります。
仮に築年数が50年だったら、耐用年数を9年(47×20%、小数点以下切り捨て)として減価償却費を計算します。

 

・建物の本体に加えて、設備も減価償却の対象

建物だけでなく、それに付随する設備にも減価償却が行われます。この場合の設備とは、建物を快適にするために備え付けられているものであり、給排水設備やガス設備、エレベーターなどが該当します。

建物本体(躯体)には、前述のような構造・用途別の耐用年数が適用され、設備部分には別途以下のような法定耐用年数が定められています。

構造・用途 耐用年数
日除け 8年

※主として金属製のものは15年

電気設備 15年

※蓄電池電源設備は8年

衛生・ガス設備 15年
店舗用設備 3年

このように、設備の耐用年数はおおむねマンション本体より短くなっています。

 

マンションの減価償却の計算方法

マンションの減価償却の計算方法

減価償却費の計算に必要な耐用年数について理解したところで、いよいよ減価償却費の具体的な計算方法について解説していきたいと思います。購入時期による計算方法の違いや、耐用年数による償却率についても簡単に説明します。

計算方法

減価償却費の計算方法には、定額法と定率法の2種類があります。

定額法

定額法とは耐用年数の間は同じ金額ずつ減価償却していく方法です。定額法の特徴は、その名の通り毎年同じ金額だけ按分される点です。仮に100万円の資産を10年で減価償却する場合、毎年10万円(100万円÷10年)ずつ減価償却費を計上できます。

定率法

これに対し定率法とは、法律で定められた「償却率」を資産から過去の減価償却額を引いた残存額にかけて減価償却費を求める方法です。減価償却する割合が一定なので、金額自体は少しずつ減っていきます

100万円の資産を10年で減価償却する場合、償却率が0.200であるため、初年度は20万円(100万円×0.200)、翌年度は16万円(80万円×0.200)……と減っていき、「償却保証額」と呼ばれる一定の額を下回るようになると、毎年同額の減価償却費となります。

購入した年月で計算方法が変わる

購入した時期によって別の計算方法を適用するというのが、減価償却の大きなポイントです。

平成28年3月以前に購入したマンションの場合は、建物には定額法だけが適用可能で、建物付属設備および構築物については定額法定率法の双方が適用可能でした(ただし償却方法の選択を届け出ていなければ、「法定償却方法」として定率法が適用)。

しかし、平成28年4月1日以降は、税法改正によって建物も建物付属設備および構築物も、いずれも定額法だけが適用されるように改正されました。

結論として、平成30年(2018年)現在は定額法だけが適用可能な状況です。税法は何度も改正されているため、定率法の適用のない状況がいつまで続くかは分かりませんが、今のところよりシンプルに計算できる定額法だけ頭に入れておけば問題ありません。ただし、税制改正などのニュースにはアンテナを張っておく必要があるでしょう。

 

「取得価格×償却率」で減価償却費を求める

<減価償却費の計算式>

取得価格×償却率

・償却率の求め方

建物の耐用年数によって決まっています。

減価償却費の計算は、「取得価格×償却率」で行います。

取得価格については、前述の通り売買契約書や固定資産税評価額から確認できます。

償却率については、建物の耐用年数によって決まっており、「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」の別表第八として掲載されています。


(引用)国税庁HP(https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/070412/pdf/3.pdf

 

住宅に関連する耐用年数と償却率の対応関係を表にまとめると、以下の通りとなります。

耐用年数 償却率
19年(金属造・肉厚3mm以下) 0.053
20年(木骨モルタル造) 0.050
27年(金属造・肉厚3mm超4mm以下) 0.038
22年(木造・合成樹脂造) 0.046
34年(金属造・肉厚4mm超) 0.030
38年(れんが・石・ブロック造) 0.027
47年(鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造) 0.022

・実際の減価償却費の計算方法

中古と新築の2つのパターンに分けて計算方法の例を紹介いたします。

①新築の場合
例)購入価格5000万円

②中古の場合
例)購入価格3000万円で築年数20年6ヶ月

 

①新築の場合
鉄筋コンクリート造の新築マンションを5,000万円で購入したとすると、減価償却費は以下の通りとなります。

● 減価償却費:

5,000万円×0.022=110万円

 

②中古マンションの場合

耐用年数として築年数に応じて耐用年数から引いた年数を用います。

鉄筋コンクリート造で、築年数20年6ヶ月の中古マンションを3,000万円で購入したとすると、減価償却費は以下の通り計算されます。

2年目以降は、同じ金額を計上することになります。

● 耐用年数:47年-21年×80%=30年
→ 償却率0.034
※1ヶ月以上の端数は1年に切り上げ、計算上の端数は切り捨て● 減価償却費:3000万円×0.034=102万円

 

まとめ

減価償却費の計算は、最初の年は大変ですが、翌年度以降は定額法である限り同じ金額を計上すればいいだけなので、かなり確定申告に向けた作業が楽になります。

減価償却費のメリットは、経費を将来にわたって予測できるという点にあります。

収支をコントロールして、所得に合わせた節税や不動産投資の戦略を練ることができるのです。減価償却費の計算方法をマスターして、スマートな不動産運営を目指しましょう。

なお、確定申告を経験したことのない会社勤めの方には手続きがかなり煩雑と感じるはずです。不動産投資会社のプロにご相談するとよいでしょう。

 

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監修者

室田雄飛

J.P.Returns株式会社
執行役員 コンサルティング3部 本部長

J.P.RETURNS執行役員。
J.P.RETURNSに入社後、設立初期より営業部を統括、本部長を務める。以降融資担当部長、流通事業部では仕入れ先開拓業務に従事、後に管理業務部等を歴任。数百戸の投資用区分マンションを販売、自身でも6件の不動産を所有、運用している。現在は自社セミナーを始め、様々な会社との協賛セミナーの講師を務めながら、常に世に発信する立場で不動産業に従事している。

【書籍】
日本で最も利回りの低い不動産を持て!
マンション投資2.0

【ブログ】
室田雄飛のモグモグ不動産投資ブログ

執筆者

島倉啓

新卒で入社した大手投資用マンションディベロッパーで、歴代最高売上を記録。その後、財閥系不動産会社で、投資物件のみならず相続案件、法人の事業用物件、マイホームの購入や売却といった様々な案件を経験。 2018年にJ.P.RETURNSの新規事業部立ち上げに参画。また、セミナー講師として、延べ100回以上の登壇実績を持ち、年間300件以上の顧客相談を担当している。

【保有資格】
宅地建物取引士、ファイナンシャル・プランナー(AFP)

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