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家賃収入が入ると、必ず税金が増えます。さらに、会社の給料とは異なり自分自身の手で税額を計算して納税する必要があるでしょう。単に税金が増えるのが痛手であるばかりか、それに要する書類集めや計算も重い負担となる可能性があるのです。
そこで、あらかじめ収入と経費、控除のシミュレーションを行い、いくらぐらい税金がかかるか計算することが重要です。また、節税策も駆使する必要があります。今回は、不動産所得に関連する税金と節税策を中心にご説明します。
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目次
マンション経営やアパート経営をして家賃収入を得ていると、そこから経費を控除した所得額に対して毎年税金を課されます。ここでは不動産に関連する税金の代表例として所得税・住民税・固定資産税を取り上げ、それぞれの特徴や納め方をご説明します。計算方法は後で詳しくご紹介します。
所得税はその名の通り所得に課される税で、国に納める国税です。所得には「給与所得」「雑所得」など10種類の区分があり、家賃収入は「不動産所得」に分類されます。なお不動産の売却益は「譲渡所得」であり、家賃収入とは異なるので注意しましょう。
所得税の課税方法には、総合課税と分離課税があります。総合課税は特定の所得を他の所得と合算して課税する仕組みで、分離課税は合算せず別々に課税する仕組みです。家賃収入=不動産所得は総合課税、売却益=譲渡所得は分離課税となっています。仮に不動産所得が赤字、譲渡所得が黒字だとしても、両者を合算(損益通算)して所得の合計を目減りさせることはできません。
本来は、前年の収入を税務署へ申告して直接所得税を支払う必要があります。しかし給与所得しかない(不動産投資など副業をしていない)会社員であれば、所得税を直接納める可能性は低いはずです。なぜなら、多くの会社では源泉徴収の形で給料から所得税を天引きし、過不足分を年末調整の形で差し引きすることで支払いの代行をしてくれるからです。例外として、所得が2,000万円を超える場合や、2社以上から給料をもらっている場合は会社員でも確定申告が必要です。
不動産投資を開始して家賃収入を得るようになると、確定申告が必須となります。また不動産所得以外で年間20万円以上の副業所得(雑所得)がある人、2社以上から給料を得ている人は確定申告が必須です。確定申告の大まかな流れは、後ほどご説明します。
住民税も所得に課される税ですが、こちらは住んでいる自治体に納める地方税です。都道府県に納める都道府県税と、市町村に納める市町村税の2種類があります。なお東京都の特別区(23区)では、市町村税ではなく「特別区民税」という名前になります。
住民税は、前年の収入から算出して翌年に納めます。やはり多くの会社員は給料から天引きされるため、直接納める必要はありません。「普通徴収」という徴収方法を選択した場合のみ、役所から5月頃に郵送されてきた納付書を利用して自分で支払う必要があります。
固定資産税は所有する固定資産(土地・建物・車両運搬具など)に課される税で、物件が所在する市町村(東京都の場合は都)に納める税金です。毎年1月1日現在の時点で固定資産を所有する人に対し、資産価格をもとに課税されます。
固定資産税が天引きされることはなく、自分で支払わなければなりません。4~6月頃に市町村ないし都(東京23区民のみ)が納付書を送付するので、そちらを利用して支払います。都市部(市街化区域)の所有者に対しては、固定資産税と同時に都市計画税も徴収されます。
所得税・住民税・固定資産税ごとに、税金の計算方法を解説します。こちらを見て、いくら納める必要があるのかシミュレーションしてみてください。
所得額に応じた税率をかけて算出されます。所得税は所得が高いほど税率も上がるという累進課税で、最大で45%に設定されています。消費税などと異なり、所得の低い人ほど実質的な税負担が厳しくなる「逆進性」が生じない仕組みになっています。
具体的な所得税率は、以下の表の通りです。
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え330万円以下 | 10% | 9万7,500円 |
330万円を超え695万円以下 | 20% | 42万7,500円 |
695万円を超え900万円以下 | 23% | 23% |
900万円を超え1,800万円以下 | 33% | 153万6,000円 |
1,800万円を超4,000万円以下 | 40% | 279万6,000円 |
4,000万円超 | 45% | 479万6,000円 |
ここで「控除額」とは、実際の税額の計算の際に所得金額から差し引かれる額のことです。たとえば所得が100万円の場合は控除がないため、そのまま税率5%をかけて所得税5万円となります。一方500万円の場合、所得税額は91万4,500円((500万円-42万7,500円)×20%)と計算されます。
ただし、ここで課税対象が「所得」であり、「収入」ではないという言葉の違いに注意してください。所得とは、収入金額から支出を差し引いたものです。不動産所得の場合は、固定資産税・都市計画税や不動産取得税・固定資産税などの税金、火災保険・地震保険などの損害保険料、修繕費および修繕積立金、管理費、減価償却費、ローンの支払利息などを経費として計上できます。
そのため、経費を詳細に計上することで所得を減らし、節税につなげることが可能です。その詳細については、後ほどご説明します。
住民税(個人住民税)は、均等割と所得割の主に2つに分かれます。均等割とは、住民税が非課税となる所得の限度額を上回る人全てに負担を求めるもので、都道府県に対して1,500円、市町村に対して3,500円が標準となっています。ただし、自治体によっては若干の差があります。
一方の所得割とは、非課税限度額を上回る納税義務者の所得額に応じた負担を求めるもので、一律10%と決まっています。このうち都道府県に対して4%、市町村に対して6%が納められます。
固定資産税は、固定資産税評価額(課税標準額)の1.4%と決まっています。固定資産税評価額は、固定資産税の納税通知書とともに送られてくる課税明細書の中に記載されています。
家賃収入が入ると、当然所得が上がりますから税金も高くなります。その一方で、経費の自由度が広がって自分の裁量で節税しやすくなります。不動産投資と経費に関するメリットをご説明しましょう。
会社勤めをしている方にとっては、「経費」というと取引先への交通費や出張費、あるいは仕事上の交際費などがメインだと思います。個人である自分に経費をつける機会は、あまりないのではないでしょうか。
確かに、会社勤めだけの場合は総収入から控除できる範囲が限られています。家族の扶養費や社会保険料控除、生命保険控除、医療費控除、あるいは住宅ローン控除などが主な控除内容となるでしょう。あまり経費を計上することは考えにくいかもしれません。
しかし不動産投資を開始すると、一気に控除の幅が広がります。不動産投資には各種手続きや不動産管理会社・税理士など業務委託先との付き合いなど、さまざまな経費を使用しないと管理すらおぼつかなくなってしまいます。そのため、前述の通り、管理費や交際費、保険料、減価償却費など、不動産の運営事業に必要と思われる費用を必要経費に含めることができます。
必要経費の種類が増えれば、当然ながら総収入から差し引ける金額が増えます。ここからさらに各種所得控除を利用すれば、所得をグッと目減りさせることが可能です。場合によっては、不動産投資を開始する前よりかえって課税所得が減ったという人もいるのではないでしょうか。
所得が減るため、所得税の税率が下がるとともに住民税や固定資産税の額も安くなります。節税によって手元に残るお金を増やせば、次の不動産の購入などの投資に回すことも可能です。税金として消えていくはずだったお金が投資に回るのですから、運用効率はきわめて良くなるわけです。
不動産投資をするのであれば、経費と控除をめいっぱい利用して節税効果を大きくするのがセオリーです。会計や税務処理は少し面倒ですが、この辺りに無頓着だとキャッシュフローが苦しくなってきます。ぜひ勉強して、有利な方法を模索してください。
住宅ローン減税の適用やふるさと納税の利用がある人でないと経験したことがないかもしれませんが、家賃収入=不動産所得が入った次の年には、その額にかかわらず確定申告が必須となります。確定申告書を作成して税務署に提出し、自分で税金を支払う必要があります。そこで、確定申告の大まかな流れをご紹介しましょう。
確定申告の時期は、毎年2月中旬から3月中旬までの約1ヵ月間です。この1ヵ月の間に確定申告書を提出し、所得税および復興特別所得税を支払う義務があります。この期間を逃すと、無申告加算税や延滞税を課される可能性が高いです。また故意に確定申告をしなかった、あるいは虚偽の申告をしたと認められた場合は、元の税額の35%ないし40%にものぼる重加算税を課されます。
ここで申告する所得および経費・控除の対象時期は、前年1月1日から12月31日の分です。早めに計算を行い、余裕を持って確定申告できるよう準備を進める必要があります。そのためにも、次にご説明する手順を理解しましょう。
確定申告の手順は、主に5ステップに分かれます。
【STEP1】
収入と経費、控除に関する情報を集めます。たとえば、会社の給料などの情報は年末調整の時期に配布される源泉徴収票に記載されています。また家賃収入については送金明細書、ローンについては投資用ローンの明細書など、支払いの時にもらったり郵送されたりした各種書類を集めましょう。万が一紛失・廃棄していた場合は、再配布できるか依頼する必要があります。
【STEP2】
必要な書類を集めたら、そこに書かれた数字を基に収支内訳書を作成します。これには、不動産の運営に関わる収支だけ記載すれば大丈夫です。収支内訳書と確定申告書の数字に相違があってはいけないので、計算ミスや転記ミスがないよう注意してください。
【STEP3】
次に、税務署へ提出する確定申告書を作成します。確定申告書にはAとBがありますが、不動産所得がある場合は確定申告書Bを使ってください。こちらに収入・経費・控除と、これらに基づく税額などを記入していきます。
なお、収支内訳書や確定申告書は国税庁のホームページや民間の税務サービスなどを利用すれば、オンラインで作成が可能です。手書きだとどうしてもミスが発生しますから、できればオンラインで作成することをおすすめします。必要な数字を自動的に転記してくれるなど、作業も効率化されます。
【STEP4】
提出書類を作成したら、確定申告期間内に税務署へ提出します。直接税務署へ赴くか、あるいは郵送が一般的です。内容にミスがないという自信があるなら郵送、一応簡単な確認だけでもしてほしいなら直接提出するのがおすすめです。ただし確定申告期間の終盤は大変混み合いますので、2月中には提出できるようにしましょう。
【STEP5】
必要書面を提出したら、確定した税金を支払います。まずは、確定申告期間の終了までに支払う必要のある所得税です。申告しただけで安心してしまう人もいますが、所得税の支払いを絶対に忘れないようにしてください。続けて、通知書が来た後に住民税や固定資産税などを納めます。
家賃収入に対する税金の対策として、2つのキーワード「経費」と「事業」をご紹介します。
既にご説明した通り、経費を多く盛り込めば所得を下げることができ、節税につながります。特に、建物の取得価格を耐用年数で割った金額を、毎年費用として計上できる「減価償却費」がポイントです。減価償却費を利用して不動産所得を赤字にし、損益通算するのが不動産投資を活用した節税策の典型例と言えます。
次に、不動産投資を事業化することです。不動産投資では、マンションやアパートなら10室以上、貸家なら5軒以上所有することで「事業的規模」であると認められ、税務上の扱いが変わります。
たとえば、青色申告という形態で確定申告をするようにすれば「青色申告特別控除」があり、10万円か65万円の控除を利用できるようになります。また、「青色事業専従者給与」として配偶者への給与も経費にできます。もう一つの白色申告でも、事業的規模の不動産投資なら配偶者86万円、配偶者以外の家族の所得も50万円まで控除されます。
また細かいところですが、建物の取り壊しなどによる損失や回収不能となった賃料を全額経費として計上できるメリットもあります。つまり、事業化することで必要経費の幅が広がり、所得額を抑えられる可能性が高まるのです。ただし、個人事業税などの納付義務が発生します。
これを事業規模にするためには自己資金と経験が必要であり、長い道のりとなることが予想されます。必ずしも規模を大きくする必要はありません。しかしキャッシュフローのことを考えると、選択肢のひとつにはなるでしょう。
J.P.Returns株式会社
執行役員 コンサルティング3部 本部長
J.P.RETURNS執行役員。
J.P.RETURNSに入社後、設立初期より営業部を統括、本部長を務める。以降融資担当部長、流通事業部では仕入れ先開拓業務に従事、後に管理業務部等を歴任。数百戸の投資用区分マンションを販売、自身でも6件の不動産を所有、運用している。現在は自社セミナーを始め、様々な会社との協賛セミナーの講師を務めながら、常に世に発信する立場で不動産業に従事している。
【書籍】
日本で最も利回りの低い不動産を持て!
マンション投資2.0
【ブログ】
室田雄飛のモグモグ不動産投資ブログ
新卒で入社した大手投資用マンションディベロッパーで、歴代最高売上を記録。その後、財閥系不動産会社で、投資物件のみならず相続案件、法人の事業用物件、マイホームの購入や売却といった様々な案件を経験。 2018年にJ.P.RETURNSの新規事業部立ち上げに参画。また、セミナー講師として、延べ100回以上の登壇実績を持ち、年間300件以上の顧客相談を担当している。
【保有資格】
宅地建物取引士、ファイナンシャル・プランナー(AFP)