不動産投資の成功率に関して、細かな公的データは存在しません。不動産投資をはじめるか悩んでいる場合は、数字ではなくメリットやデメリットから判断することが大切です。
不動産投資の成功率が気になる方向けに、成功基準や失敗の定義、成功するためのポイントを解説します。
目次
不動産投資をはじめるにあたって、「不動産投資における成功率は何割か?」と疑問に思う方もいるでしょう。一般的に「不動産投資の成功率1割程度」と表現されることがありますが、公的データはなく、はっきりとしたことは言えません。
また、不動産投資の何を持って「成功」とするかによって、成功率の数字が変化するでしょう。そこで本記事では具体的な数字ではなく、「不動産投資は果たして成功しやすいのか」というアプローチで成功率に迫ります。
まず、不動産投資における「成功」にあたる基準や、対局に位置する「失敗」の定義について確認しておきましょう。
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不動産投資の成功基準は、人によって異なります。「最終的に数十万円でも利益を出せば成功」と考える人もいれば、「毎年数百万円程度の家賃収入を得られることを成功」と考える人もいるでしょう。
一般的に用いられる基準のひとつが、家賃収入と不動産売却の合計額が投資金額を超えることです。不動産投資では、家賃収入(インカムゲイン)だけでなく、売却益(キャピタルゲイン)も期待できるため、売却時点の収支から成功かを判断します。
また、家賃収入だけで生活できることも成功基準のひとつです。十分な家賃収入があれば勤労しなくとも生活が可能なため、早期リタイアして自由を手に入れる「FIRE」を実現できます。
国税庁による2020年のデータによると、所得種類別内訳(主たるもの)の総人数2,247万8,554人中、不動産所得を主たる収入として申告している人は154万8,670人でした。つまり、所得を得ている人のうち、約7%は主に家賃収入で生計を立てていると判断できます。
なお、不動産投資の成功事例について、以下の記事で詳しく解説しています。
不動産投資で失敗する比率から、成功率に迫ることもできます。不動産投資の失敗率を計算する際に参考となる指標が、不動産投資ローンの延滞率やデフォルト率です。不動産投資のために借りたにもかかわらずローンを返済できないということは、当初想定していた家賃収入を得られていないと判断できます。
例えば、千葉銀行は賃貸用不動産向け貸出全体の延滞率は0.02%(2018年度中間決算説明会)、群馬銀行の賃貸不動産向け貸出のデフォルト率は0.22%(2018年9月期 中間決算説明会)でした。
ただし、想定していた家賃収入を得てなくても、自己資金を切り崩して返済することで延滞やデフォルトを回避しているケースもあります。実際の失敗率は延滞率やデフォルト率より高くなる点に注意しましょう。
なお、アパートローンや不動産投資ローンに絞って自行が抱える債権の延滞率を発表している銀行は多くないため、金融機関や年度によって延滞率・デフォルト率に関する情報を入手できません。
参考:国税庁「第146回国税庁統計年報書 令和2年度版」
:千葉銀行「2018年度中間決算説明会 主な質疑応答」
:群馬銀行「2018年9月期 中間決算説明会」
成功率を具体的な数字で把握できなくても、不動産投資のメリットとデメリットを比較すれば、投資すべきか判断しやすくなります。不動産投資の主なメリットは、以下の5点です。
・安定した収入を期待できる
・少ない資金でも大きなリターンを期待できる
・老後の安心につながる
・生命保険の役割を果たす
・節税対策になる
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また、不動産投資のデメリットには、以下の4点が挙げられます。
・上場株式や投資信託と比べて流動性が低い
・各種コストがかかる
・一定の労力を要する
・さまざまなリスクを伴う
不動産投資に関する5つのメリットと4つのデメリットを確認していきましょう。
まず、不動産投資をはじめることで安定した収入を期待できる点がメリットです。基本的に家賃に大きな変動はないため、毎月ある程度決まった収入を得られます。
2つ目のメリットは、少ない資金でも大きなリターンを期待できる点です。銀行から不動産投資用のローンを借りれば、手元資金では買えない物件も手に入れられるため、より大きな利益を期待できます(レバレッジ効果)。
3つ目のメリットは、老後の安心につながることです。定年退職して給与所得を得られなくても、定期的に不動産所得を得られるため、年金収入に頼らずに生活できます。
4つ目のメリットは、生命保険の役割を果たすことです。不動産投資ローン利用時に団体信用生命保険に加入できれば、自分に万が一のことがあった場合に残債がなくなる上に不動産を親族に相続させられます。
最後に、節税対策になる点もメリットです。不動産は現金などの金融資産に比べて相続税評価額が低く計算される傾向にあるため、相続人が支払う相続税を抑えられます。
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まず、上場株式や投資信託と比べて流動性が低い点がデメリットです。上場株式や投資信託は売却を決断すれば数日後に現金化できるのに対し、不動産を売却するには買い手を探すことからはじめなければならないため、現金化までに1ヶ月以上はかかります。
また、各種コストがかかる点もデメリットです。不動産投資には、不動産取得税や固定資産税といった税金や、修繕費などさまざまなコストが発生します。
さらに、一定の労力を要する点もデメリットです。投資にあたって物件選定の手間がかかる上、不動産管理や確定申告の作業もおこなわなければなりません。
最後に、さまざまなリスクを伴う点が不動産投資のデメリットです。主なリスクとして、空室が多く家賃収入が想定より減少する空室リスク、入居人に家賃を滞納される滞納リスク、地震や火災により物件が損傷・倒壊する災害リスクなどが挙げられます。
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成功率という具体的な数字を確認できなくても、他の投資との特徴を比較することにより、不動産投資の成功のしやすさを把握可能です。不動産投資以外にも、株式や投資信託、債券、金、外貨預金などさまざまな投資が存在します。
ここでは、株式投資や投資信託との比較を通じて、不動産投資が成功しやすいのか探っていきましょう。
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株式投資とは、企業の発行する株式の売買を通じて、運用する投資のことです。証券口座を開設した証券会社を通じて株式投資をおこないます。
株式投資で得られる主な利益は、株式売買益、配当金収入、株主優待です。株式投資の成功率は1割と表現されることがありますが、不動産投資の場合と同様に明確なデータは存在しません。
株式投資のメリットは、投資対象企業の情報収集がしやすい点です。一方で、大きな損失を抱える可能性がある点が、デメリットとしてあげられます。
毎日の値動きが比較的激しい分、長期的な資産運用として考えた場合は不動産投資よりも成功が難しいといえるでしょう。
投資信託とは、投資家から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、専門家が株式や債券などに投資・運用する商品のことです。投資信託は、証券会社だけでなく銀行や郵便局などの金融機関でも購入できます。
一般的に、不動産投資では最低でも数百万円の資金が必要とされるのに対し、投資信託は数千円からでもはじめられる商品が存在する点がメリットです。一方、運用にあたって、購入手数料、信託報酬、売買信託手数料、信託財産留保額などさまざまなコストがかかる点がデメリットとしてあげられます。
低リスクでの長期運用を目指すのであれば、不動産投資よりも投資信託の方が成功できる可能性が高いです。一方で、より短い期間でより大きな収入を得たいのであれば、不動産投資の方が期待できるでしょう。
参考:投資信託協会「そもそも投資信託とは?」
:日本証券業協会「投資信託ってどこで買えるの?」
:日本証券業協会「最低投資金額っていくらぐらい?」
不動産投資は、ワンルーム投資、戸建て投資、一棟投資、駐車場経営、REITなどさまざまな種類が存在します。それぞれ特徴やメリット・デメリットが異なるため、どの不動産に投資するかによって、成功率(難易度)も変わってくるでしょう。
より具体的に不動産投資の難易度を把握するために、各種の特徴やメリットとデメリットを解説します。
ワンルーム(マンション)投資とは、マンションを一棟丸ごと購入するのではなく、建物のうち一部屋のみを購入して第三者に貸し出す投資のことです。総投資額が低いことから損失リスクを抑えられるため、初心者でも成功できる可能性があります。
投資対象が一部屋のみのため、管理の手間がかからない点もポイントです。ただし、入居者がなかなか見つからないと家賃収入がゼロの期間が続くため、不動産投資の成功から遠ざかる点に注意しましょう。
戸建て投資とは、アパート・マンションではなく一戸建て住宅を購入し、第三者に貸し出す投資のことです。アパート・マンションに比べて一戸建ては入居人が長く住む傾向にあるため、長期的な収入を期待できます。
戸建て投資の特徴は、自分のタイミングで修繕やリフォームができる点です。また、不動産投資の最終局面において、「物件を売却する」「自分で住む」「更地にして売却する」などさまざまな選択肢を検討できる点も、メリットとして挙げられます。
一方、築年数や立地、投資対象物件に瑕疵がないかなど、さまざまな点を見極めなければならない点、空室リスクが高い点などが戸建て投資の難しさです。
一棟(マンション)投資とは、マンションを丸ごと一棟購入し、各部屋を第三者に賃貸することです。一部屋のみを抱えるワンルーム投資と異なり、一棟投資では複数の部屋を第三者に賃貸可能なため、空室リスクを抑えられます。
ただし、一棟購入は高額な資金が必要になる点に注意が必要です。高い家賃収入を得ることを目標に掲げるのであれば、ワンルーム投資よりも一棟投資の方が成功しやすいですが、その分失敗した時に大きな痛手を被ることになります。
駐車場経営とは、所有する土地に駐車場を設置し、駐車料金を得るという投資です。駐車場経営は基本的に建築不要のため、他の不動産投資よりコストを抑えて運営できます。
また、建物を建てにくい場所でも経営可能、災害リスクがマンションやアパート向け投資よりも低い点などがメリットです。また万が一駐車場経営で成功できなかった場合には、立地にあわせて建築し、別の形態の不動産投資に挑戦できます。
ただし、駐車場は住宅用地の特例措置を受けられないため、住宅を建てる場合よりも数倍高い固定資産税を課される点がデメリットです。また、平面で利用できる土地が少ないため、期待できる収入も他の不動産投資より低くなります。
REIT(不動産投資信託)とは、マンション・オフィスビルといった不動産に投資して得た賃貸収入などを投資家に還元する仕組みの投資信託のことです。数万円単位と少額で購入可能な投資のため、損失リスクを軽減できます。
REITのメリットは、証券取引所の取引時間中にいつでも購入・売却の注文が可能な点です。また、専門家が運用するため、不動産投資の知識が浅い初心者でも成功できることがあります。
一方で、投資した不動産が自分の所有にならない点がデメリットです。
参考:東京都主税局「固定資産税・都市計画税(土地・家屋)」
:金融広報委員会「不動産投資信託(REIT)」
不動産投資だけで生計を立てている人たちが一定数存在するため、成功は決して難しいことではありません。その一方で、不動産投資にあたって借りたローンを返済できなくなる人もおり、成功できない可能性も当然あります。
マンション投資のリスクとは。物件選びや計画次第で失敗は防げる
そこで、不動産投資の成功率を高めるために、以下の条件やポイントを理解しておきましょう。
1.リスクやコストを把握しておく
2.医師や公務員は不動産投資に向いている
3.利回りや空室率などから投資物件を吟味する
4.出口戦略をあらかじめ立てておく
5.不動産投資の勉強を怠らない
ここから各ポイントを解説します。
不動産投資では、空室リスクや滞納リスク、災害リスクなどさまざまなリスクを伴う上に、修繕費や固定資産税などの税金・コストがかかります。
対象物件から期待できる収益はいくらか、リスクは高いのか低いのか、コストや税金はいくらくらいかかるのかといった情報を整理した上で、不動産投資するかどうかを決断するようにしましょう。
不動産投資は、ローンを借りることで自己資金以上の投資が可能です。医師や公務員の場合、ローンの審査を通過しやすい傾向にあるため、不動産投資に向いています。
ただし、不動産投資のやり方や金額によって「副業」とみなされる可能性があるため、公務員は人事担当者に問題がないか確認した上ではじめた方が良いでしょう。
公務員に不動産投資が向いている理由は?副業禁止規定との関係も解説
不動産投資で損失を抑えて一定の収益を出すためには、コストがあまりかからず、多くの人が入居したいと思う物件を所有することがポイントになります。利回りや空室率、エリアといった要素から、投資物件を吟味するようにしましょう。
利回りとは、対象不動産から一年間で得られる見込みの収益のことです。実質利回りは以下の計算式で求められます。
(年間収入 - 維持費などの諸経費)÷(物件購入価格+購入時にかかる諸経費)×100
つまり、家賃を上げたり空室率を改善したりすることで年間収入が上がれば実質利回りは向上しますが、諸経費が上がれば利回りは低下します。
不動産投資で成功するためには、一時的に利益を出すだけでなく、不動産を手放す際にトータルでプラスにならなければいけません。そこで、損失を出さずに対象不動産を売却できるように出口戦略をあらかじめ立てておきましょう。
売却時にできるだけ値下がりしないようにするためには、駅近に位置する物件や、首都圏など人が集まりやすいエリアの物件を選ぶことがポイントです。また、当初予定していなくても、空室率の改善見込みがない場合や管理費や修繕費が上がりそうな場合は、売却を選択肢に入れた方がよいでしょう。
不動産や不動産投資に関する知識を身につけていれば、物件の管理や選定、リスク回避がしやすくなります。不動産投資で成功率を高めるために、不動産投資の勉強を怠らないようにしましょう。
不動産投資に関する知識は、書籍やネットを通じて身につけられます。また、不動産投資エージェントのセミナーに参加したり、個別相談したりすれば、プロの意見を参考にできるでしょう。
不動産投資の成功率に関する、公的データはありません。不動産投資のメリットやデメリットを知ることや、他の投資手法との比較を通じて、自分がはじめやすいか判断するとよいでしょう。
また、不動産投資で成功するためには、リスクやコストを把握することや専門知識を深めることが大切です。どうやって不動産投資の知識を深めればよいかわからない場合は、セミナーへの参加も検討してください。
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J.P.Returns株式会社
執行役員 コンサルティング3部 本部長
J.P.RETURNS執行役員。
J.P.RETURNSに入社後、設立初期より営業部を統括、本部長を務める。以降融資担当部長、流通事業部では仕入れ先開拓業務に従事、後に管理業務部等を歴任。数百戸の投資用区分マンションを販売、自身でも6件の不動産を所有、運用している。現在は自社セミナーを始め、様々な会社との協賛セミナーの講師を務めながら、常に世に発信する立場で不動産業に従事している。
【書籍】
日本で最も利回りの低い不動産を持て!
マンション投資2.0
【ブログ】
室田雄飛のモグモグ不動産投資ブログ
新卒で入社した大手投資用マンションディベロッパーで、歴代最高売上を記録。その後、財閥系不動産会社で、投資物件のみならず相続案件、法人の事業用物件、マイホームの購入や売却といった様々な案件を経験。 2018年にJ.P.RETURNSの新規事業部立ち上げに参画。また、セミナー講師として、延べ100回以上の登壇実績を持ち、年間300件以上の顧客相談を担当している。
【保有資格】
宅地建物取引士、ファイナンシャル・プランナー(AFP)